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木陰の下で、一輝君が昼寝をしているのを見つけた。
なんとなしに歩み寄ってみる。その際に草を踏みつけてしまい、さわりとかすかに音がたった。

一輝君はまだ目を閉じたまま。

何の気なしに彼の隣に腰かけてみる。瞬間彼が口を開いた。

「…なんだ、なまえ」
「やっぱり、起きていたの?」

たぶん私が近づいた時にはもう起きていたんだろうなあ、なんて。
だって彼はとっても強い聖闘士だから、きっと私みたいなただの女の抜き足差し足なんてすぐに気付いてしまうのだろう。でも、隣に座ることを拒否しなかった。今だって、目を閉じたままだけど、私に何か文句を言うことはない。

「一輝君、今日は暖かいね」
「…ああ」
「あのね、さっき歩いていたら桜が咲いていたんだよ。春だなって思ったの、嬉しいなあ、春、好きなんだ」
「ああ」

ちらりとこちらを見た一輝君に笑いかけた。すぐに顔をそらされてしまう。ちょっと残念だ。
でも私は彼がこちらを見なくても傍にいたいし、ずっと見ていたい。

「ねえ、一輝君、もう少しここにいてもいい?」
「…勝手にしろ」
「ありがとう」

一輝君はいつだって否定しない。
受け入れないだけで、否定することはない。それが優しいことなのか、ひどいことなのか私にはよく分からなかったけれど、私はそれで構わなかった。なんにせよ、一輝君は私を否定しない。今だってこうして傍に来ることを許してくれる。

だから今はまだ、駄目かもしれない。だけど、頑張ればいつか受け入れてくれるかもしれない。

そんな日は、来ないかもしれないけれど。
それでも一輝君はいつも私が近づくことを許してくれる。冷たいのか、そうでないのか分からない優しい一輝君。

許されるならずっと傍にいたい。
声を聞いていたい。できるなら、たくさん話をしたい。一緒にたくさんのものを見たい。私と同じような気持ちを、抱いてくれることがあるのなら私は生まれてきたことに今まで以上に感謝する。冷たいように見えても本当は誰よりも温かくて、優しくて、真っすぐな子。


一輝君。

私は君に、恋してる。


「ねえ一輝君、一輝君」

いつでも、私なんかを傍に置いてくれる、君に。


「なんだ」
「一輝君は優しいね」

私の言葉に、彼は変な顔をした。そんな顔も、やっぱり大好きと感じてしまうなんて、私はもう末期だ。


(君に焦がれて燃え尽きたいの)

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