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「…なまえ?」

ふと気配を感じて頭上を見上げれば、木の上になまえが随分と絶妙なバランスで転がっていた。どうやら眠っているらしいが、あんな場所で眠っていたら危険ではないかと下から名前を呼んでみる。それでも気がつかない彼女に自分も上って起こすべきかと考えたが、果たしてこの木が俺と彼女の分の体重を支えられるかについて思考が至った時、その行動を起こすことを諦めた。

「なまえ」

もう一度呼んでみたが、彼女はぴくりとも動かない。

と、思った瞬間、ぐらりとなまえの体が傾いて落ちて来た。「っ!!」「!?」慌てて手を伸ばした瞬間、なまえも目を覚まして自分の腕の中に落ちてきた時随分と間抜けな顔をした。

「な、なにごと?」
「それは俺の台詞だ」

少しばかり呆れてそう言ったのだが、なまえは特に気にならなかったようでへらりと笑っておはようと言った。もう太陽が天上から傾き始めていると、そういえばなまえは「じゃあ、おそよう?」などとふざけたことを言って俺の腕から離れた。

「ありがと、地面にたたきつけられるところだった」
「受け身くらいとれ」
「次は気をつけるわ」
「まだ木の上で眠るつもりなのか」
「日が当たってあったかいよ」
「そうか」
「リアも一緒にどう?」
「…いや、俺は遠慮しておこう」

その言葉になまえはへらりと笑ってみせると、背伸びをした後俺を見る。「小さい頃は一緒に木の上で昼寝をしたのに」そう言って、少しだけ残念そうな顔をしたなまえに、「もうそんな子供でもない」と言えば今度は少しだけ寂しそうな顔をする。木から落ちた時に飛んだらしい仮面を地面から取り上げて彼女の顔に押し当てた。「ぶっ」という声が聞こえてきたが、それはあえて気にしないことにする。

「仮面、気をつけろ」
「リアなら見られても良いわ」
「どういう意味だ」
「どうせ貴方は小さい時から私の顔を見慣れている」

小さい頃は私から仮面を隠して遊んでいたでしょと、楽しそうな声で言われて目を反らす。そんな子供の頃の話を持ち出さないでもらいたいとぼやけば、なまえはけらけらと笑った。

「ちょっと、そんな不機嫌そうな顔をしないで」
「元からだ」
「ふふ、眉間のしわがいけないわ」
「やめろ、なまえ」

ぐりぐりと眉間に人差し指を押しつけて来た彼女の手をとって息をつけば、なまえはまだおかしそうにくすくすと笑っていた。何がおかしいんだと言えば、なまえは小首を傾げる。それに合わせて髪が肩からさらりと零れおちた。

「でもね、リア」
「…なんだ」
「私、本当にリアになら顔を見られても良いのよ、本当。大丈夫よ、問題ないもの」
「は?」

それじゃあ私はシャイナと約束があるからと言ってさっさと走りさったなまえの背中をただ茫然と眺めた。「リアになら顔を見られても良いわ」と彼女は確かにそう言った。(俺の耳がおかしくなったのでなければの話だが)
その言葉の真意をいくら俺が考えこんだところで分かるはずもなく、ただ彼女のいなくなった木の枝が風に揺られているのを眺めることしかできなかった。



(それは一体どういう意味なのか)

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