「あっちいけ、このやろー!!」
出会いがしらにいきなりキレられたのは、はるうららの午後のことだった。
そうして散々暴言を吐かれた後に、はあはあと荒い息で涙目になってしゃがみ込んだロヴィの隣に座る。コロッセウムの上を見たことがない鳥が飛んで行った。は、ちょっとまってよ今あほーとか鳴いた? ちょっとちょっと、どこの誰の事なの、それ。
「ねえ、あの鳥捕まえて焼き鳥にしてきて良い?」
「はあ!? 意味わかんねえぞ、ちくしょーが!」
「いや、今馬鹿にされたからさあ」
「今馬鹿にしたのは俺だろ!」
「ロヴィのは癇癪って言うの」
さあさあ、落ち着いたらで良いから何が悲しかったのか言ってごらん、お姉さんが聞いてあげるよ。
そう言ったらロヴィは渋面になって顔を逸らした。それからまた沈黙が続く。荒い運転の車が何台もわたしたちの背後を走り抜けて行ったのを、ぼんやりと感じていると、やがて彼が口を開いた。
「お前がっ」
「うん」
「お前がそうやって大人ぶるから、」
ぐすっと本格的に泣き出す可愛い子は膝を抱えてしまう。
「俺なんてヘタレだし、すぐ泣くし、弱いし、いつか愛想つかされるに決まってる」
「つかない、つかない」
「嘘だ、どっか遠くに行くんだ」
「嘘じゃないよ、ロヴィ。どこにもいかない。ずっとここにいるよ。だってわたしはね、ロヴィにムキムキマッチョボーイになってほしいなんてかけらも思ってないの」
顔を上げたロヴィの目元にある、きらきらとした水滴を指で救い上げて頭を抱いてやる。さらさらの髪が頬に触れた。わたしが好きになったのはね、ヘタレで泣き虫で弱くて美人に目のない男なの。まったく良いところがないように見えるかもしれないけど、不器用なだけで本当はまっすぐで愛情深くて、とても可愛い人なの。だからわたしはずっとロヴィのことが好きなのよ。
「好きよ、ロヴィ」
「じゃ、じゃあ! 絶対どっかいくなよ、このやろー!」
うん、分かった。
← top →