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 「今日は愛するものが心行くまでいちゃいちゃして良い日なんだって」

 語尾にハートでもついているのではと疑いたくなるほど気持ちの悪い甘ったるい声で言ったなまえが指をからませてくねくねとしながら近寄ってくる。身の危険を感じて距離を取るが、やつもめげずに攻めてくる。くそ、冥闘士よりよっぽど性質が悪い敵ではないのか、こいつは。

 「ねえ、だからカノン……」
 「何がだからだ、寄るな気色が悪い」
 「そんなこと言って、本当にツンデレなんだから!」
 「止めろ、寄るな気色悪い」
 「寄るな気色悪いってエキサイト翻訳だと、べ、べつにあんたの傍にいたいわけじゃないんだからねっになるんでしょ! 知ってる!」

 何が知ってるだよ、間違いだろうが。余裕で赤点、留年決定だ。とりあえずこいつは人生を留年したほうが良いと考えながらひっついてくるなまえを引きはがそうと肩を掴んだ、途端にやつが叫ぶ。

 「いやんあはん激しすぎぃ!」
 「誰かこの汚物を追放しろおお!」

 猥褻罪で異次元に追放しても良いのか、良いんだろう、もうゴールしても。雑兵は一体何をしているのか、こんな人間を聖域に入れるなど愚行にも程がある。「やだカノンってば、わたし聖域出身だから!」ああそうかでは何故聖域でこんな変態が生まれてしまったのか。「すべては愛のため……そう、愛は人を狂わせるのです!」お前が狂っているのは最初からだっただろうが。

 「ちなみに今日はちゃんと勝負下着だよ!」
 「見せるな」
 「カノンの目の色だよ!」
 「知るか」
 「あ、サガさんの目の色でもあるか」
 「殺すぞ」
 「やだ妬かないの!」
 「星々とともに砕けろ」
 「そんなに怒らないで、カノンが一番だし、カノンしか好きじゃないから、だから大丈夫だよ! カノンのためならなんでもできるよ、カノンじゃなきゃ嫌だよ、ねえカノンってば、目を逸らさないでよう」
 「お前、本当に帰れ」
 「あれ、ちょっと、カノン? どこいくの、待ってよ〜」

 大股でその場を去れば、ばたばたと騒々しい物音をたてながらおいかけてくるなまえにため息を一つ。そしてそれから今度は盛大なため息をもう一つ。
 「カノン、待って〜」
 ちくしょう、ちょっと悪くないとか思った俺を誰か殺せ。


 (これは何かのウイルスだ/背骨様)

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