Project | ナノ
 「ロスに渡したいものがあるの!」
 真っ赤な顔にきゅん。
 「沙織ちゃんと一緒にケーキ焼いたの、バレンタインだから! 口に合うか分からないけど……っ」
 差し出された小さな手の中の箱にもきゅん。
 「あああああの、それでヨーロッパでは男の人からプレゼントするってさっきデスマスクさんに聞いてびっくりして、あれ逆かもって変に思われちゃうかもしれないけど、どうしてもロスにもらって欲しかったから……えっと」
 文化の違いに焦っているのか、あわあわとしながら必死に喋る姿にもきゅん。

 「わたしはロスがすっごい好きです! も、もらってくでゃさい!」

 噛んだ。噛んだ!
 すぐに気が付いて、ただでさえ赤い顔がさらに色を増し、首と耳まで染まっていく。視線が宙を泳いで彼女が大混乱の中にあるのは目に見えていた。ああ、なんて可愛いんだろうと思わず笑みを零すとなまえはびくりと震える。

 「ごめんなさいごめんなさいかっこわるくてごめんなさい」
 「どうして、可愛いじゃないか」
 「ひえええアイオロスさんはすごくかっこいいです!」

 男前だし優しいしあれわたし何言っているんだろうすみませんごめんなさい頭おかしくてごめんなさい。大パニックらしいなまえはそんなことを早口で言いながらぐるぐると歩き回る。ケーキはお礼を言ってから有難く受け取るとして、さて彼女をどうしてくれようか。こんなにも可愛い子をそのまま帰すなんて私にはできそうにもない。考えてみれば、答えは至極簡単に出たのだが。


 「そうだ、結婚しよう」
 「ひええええっ」

 (私のなまえはこんなにも可愛い!)

 (震源地、心臓/背骨様)

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