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 バレンタインデーって女の子が男の子にチョコを贈る日じゃなかったっけ。少なくともわたしの頭の中ではそういうふうに理解されていたから色々なお店を渡り歩いてエルヴィンさんにぴったりのチョコレートを探し当ててきたというのに、何故か当日エルヴィンさんのほうがわたしに花をくれた。手の中いっぱいの花を見て混乱するわたしの頬にキスをひとつ落とした彼が言う。「本来バレンタインは男性が女性に贈り物をする日だよ」それは知らなかった勉強になった。「顔が赤いな、なまえ」だって不意打ちだったんですもん、これは。

 すっと伸びて来た手から思わず後ずさるとエルヴィンさんの目が細められる。
 「何故逃げる、なまえ?」
 「だ、だって、恥ずかしい、から」
 エルヴィンさん今キスしようとしたでしょ。

 自分で言って自惚れたかもと恥ずかしくなって花束を抱く。俯きたくても俯けなかったのは、エルヴィンさんの海のように真っ青な目がじっとわたしを見つめて捕えて離さなかったからだ。
 ついつい見つめ返してしまってから後悔する。エルヴィンさんは目力がすごい。それからわたしの好きな人だ。だからやっぱり恥ずかしくなって顔が熱くなってきた。それを見たからか、彼がふっと笑みをこぼす。

 「確かに、君の言うとおりだが誤解もある」

 意味が分からないエルヴィンさん。眉を寄せて首を傾げると、今度は逃げる間もなく後頭部に手を回されて口づけられた。間近に見えた青い目に、気を失いそうになる。リップノイズとともに離れた彼は、それでも距離をもとに戻すことなくわたしの耳元に口を寄せて囁いた。


 「私はね、」
 「?」
 「私は、いつでもしたいと思っているよ」

 (わたしはいつでもあなたに悩殺されそうだよ!)

 (虹色少女殺人事件/背骨様)

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