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シュラがただの天然。




「じゃじゃじゃじゃーん!」
「その馬鹿のような台詞は一体なんだい?」
「アフロディーテ、貴方って時々とても冷たいわ!」

なら、ちゃちゃちゃちゃっちゃちゃーん!ならどう?と聞いたが、彼は肩を竦めてみせただけだった。なんだよ失礼ね、日本の国民アニメの猫型ロボットがアイテムを出す時の有名なBGMだったというのに。

「…それはなんだ」
「沢蟹」
「いや、なんで蟹がこんなところにいるのかと俺は聞いているんだ」
「あのね、デスの馬鹿ったれたらね、あんまりにもアテナのことをからかったせいで、怒った女神に蟹に変えられちゃったのよ」

そう言って、手に持った忙しなく動き回る沢蟹の入った水槽をシュラの前にずいと出す。彼は少し身を引いて、沢蟹をじっと見つめた後息をひとつついて呆れたように笑った。

「そんな馬鹿な」
「あら、そう言い切れる?神話の時代アテナはアラクネを蜘蛛に変えているし、神話では人間が動物に変えられる事象は多くあったでしょう?デスが蟹にされても不思議じゃないわ!」
「む…」

私の言葉にしばらく考えこんだシュラは、ふと水槽の中に指を入れた。沢蟹の背中をちょいちょいと突っつく。蟹はしばらく嫌そうにその指から逃げ回っていたが、すぐにシュラの指を思い切り挟んだ。

「…っ!」
「あら大丈夫、シュラ?」
「………、この態度の悪さはデスマスクだ!」
「でしょう!?」
「それで?その蟹をどうするつもりだい?」
「沙織ちゃんが揚げたら美味しいって言っていたけど」

その言葉に思い切り顔を顰めたアフロディーテは、首を何度か振ると嫌そうな顔をそのままに椅子に腰かけた。

「揚げるより茹でたほうが良いに決まっている」
「あら、確かに茹でても美味しいかも」
「お前ら!確かにあいつは馬鹿で女たらしで頭は良いが短気で駄目な男だったが、何も食うことはないだろう!」
「えー、だって蟹になったデスなんて私にはどうしようもないわ」
「そうだね、私もあいつの尻拭いはごめんだ」

ふっと笑ってそういったアフロディーテにだよねーと同意して彼の隣に腰掛ける。蟹の入った水槽を机の上にそっとおくと、シュラがそれを物凄い勢いで取り上げた。

「俺が育てる」
「えっ、シュラが?」
「あれでも昔馴染みだ。本音を言わせてもらえば、実物よりもこの蟹のほうが幾分可愛げもあるというものだ。育てることくらいならできる」
「ならデスマスクは君に頼むよ、シュラ」
「ええ、お願いするわ、シュラ」
「任せろ」
「ぶふっ!!」
「どうした、なまえ」
「なっ、なんでもない!」

きりっと答えたシュラについ吹きだす。隣に座っていたアフロディーテがそれににやりと笑みを浮かべた。綺麗な顔に皆騙されがちだけれど、アフロディーテも相当いい性格をしていると思う。不思議そうな顔をしながらも納得したらしいシュラが椅子に着くと、彼の笑みはさらに深く顔に刻まれた。

「なあに?」
「…」

隣でにやにやと笑うアフロディーテが顎でさした方向には、任務から帰ってきたらしいデスマスクの姿。シュラからは丁度死角になっているから見えないらしい。気づかずに、どこか哀愁漂う表情で蟹の背中をつついていた。

「おう、お前ら、俺の宮で何やっているんだよ」
「あっ、貴方は何者!?」
「何者だ!十二宮に侵入するとは…!」

ふざけてそういった私とアフロディーテにデスマスクは片眉を上げて私たちを見た。意味が分からないときとか混乱しているときの彼の癖だ。それにまた吹きだしそうになるのを必死に我慢してシュラを見た。

「巨蟹宮までデスマスクの姿を模して上ってくるとは…、敵ながらなんという男だ!だが残念だったな、デスマスクはここにいる」
「は…?」

そう言って蟹の入った水槽を指差したシュラを見たデスマスクが今度こそ表情を大きく崩して訳が分からないというような顔をした。あ、やばいやばい、そろそろ限界!

「正体を表せ、侵入者よ!エクスカリバー!!」
「ぎゃあああああ!!あぶねえな!何するんだよ!!」
「ぶっ、あっははははっはっは…!!!さっ、さいこー!シュラ、貴方ってやっぱり最高だわ!!」
「ふふ…っ、あっはっは…!ま、まさか本当に騙されていたとは…!」
「な、なんの話だ?」
「実はデスマスクは双子だったっていう話よ!」
「な、なに?そうだったのか!」
「ぎゃー!あははは…っ!!やばいやばい!お腹痛いよー!!」
「…お前ら、俺を使ってシュラで遊んでいたな?」
「君は頭の回転が速くて助かるよ、デスマスク」
「なに、デスマスクだと?双子揃って同じ名を名乗っているのか?」
「もっ、もうだめー!」


(兄さん、巨蟹宮が騒がしいのだが…)
(どうせいつもの馬鹿騒ぎだろうなあ)

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