Project | ナノ
「それで、何もないところで転んじゃうんですよ、ちょっとお茶目で可愛いと思いませんか?」
「はあ」
「それにいつも仏頂面なんですけどね、この間私にお花をくれたんです!桃色で、小さくて、すごく可愛いものなんですけど」
「そうですか」
「それから…、普段はあんまり笑ってくれないんですけど、ちょこちょこ後ろをついて歩いてきてくれることとか、ぎゅうって抱きしめてくれることとかあって、ああ、愛してもらえてるのかなって!」

にこり、にこり、ぽんぽんと小さく桃色の花が散っていてピンクのオーラに包まれているなまえが見える。おや、私としたことが、疲れているのでしょうか。きっとそうに違いありませんね、まさか人から花が飛び散ったり桃色オーラが出ていたりすることなどないはずですから。

「ところでなまえ、何をしに私のもとを訪れたのです?」

そうだ、きっと疲れている。それならば会話を切り上げ仕事はラダマンティスに押し付けて早く自室で休もうと話を切り出すことにする。なまえは忘れていたとばかりに目を丸くした後、へにゃりと笑って口を開いた。

「それなんですけどね、地上に一度帰りたいんです」
「はい?」

そんなことを勝手にしたら絶対に殺される。主に私一人がハーデス様に殺される。そんなのは勘弁だというオーラをおしみなく発揮すれば、それに気がついたなまえが、またへにゃりと笑った。

「あ、別に脱走とかそういうわけじゃなくて、いつもハーデスにはお世話になっているから何か贈り物をしたいと思って。それに、そろそろ母さんたちにも会いたいし…」
「はあ…、ですが、私の独断で貴女を地上にお返しするわけには…、…、…?」


ふと、視線を感じて顔を上げた。

目があったのは柱の陰からこちらを物凄い形相で睨みつけてくるハーデス様。

それから、その反対側の柱からは妙になまえを可愛がっているパンドラ様の鋭い視線。

その奥からは彼女探しに駆り出されたらしいヒュプノス様とタナトス様の絶対零度の視線。おかしいですねえ、何故私がこのような攻撃的な視線を一斉に受けなければならないのでしょうか。

「ミーノス?」
「…いえ、あの、その話はまた後日。今日は戻られたほうがよろしいでしょう」
「また来たら、今度は連れて行ってくれる?」
「そうですね、ラダマンティスにでも頼んでおきましょう」
「わあ、ありがとう!」

ぱっとなまえが笑った。視線が強くなる。痛い、痛みなど感じるはずがない唯の視線のはずなのに、物凄く痛い。本当に何故私がこんな目で睨まれなければならないのでしょうか。遺憾の意ですね。

「なまえ」
「あ、ハーデス!」

ようやく主君が口を開いた。相変わらずじっとりとした視線は私に突き刺さったままだったが、なまえがハーデス様を見た途端にそれは崩れた。

「突然消えるなど…、心配をさせてくれるな」
「ごめんなさい、ハーデス。今帰ろうとしたところだったのよ」
「…心配をしたぞ、なまえよ」
「えへへ、ありがとう。心配をかけてごめんなさい、ハーデス」

ほわり、ほわり、ぽんぽんぽん、小さく桃色の花が散っていてピンクのオーラに包まれているなまえとハーデス様が見える。おや、私としたことが、おかしいですね。どうやら疲れているようです。目がいかれてしまったのでしょうか、それとも視力機能がマントルを通り越し地球の裏側へ、そしてそのまま大気圏突入して宇宙旅行に行ってしまったのでしょうか。困ったものです。それになんだか胃まで痛くなってきた気がしますねえ。これではどこぞの双子の兄のようではないですか。本当にどうしてくれましょうか。

「…愚かだろうか?私以外の男と接して欲しくはないなどと思ってしまうことは」
「…!そんなことないわ、もしかしてやきもちをやいてくれたの、ハーデス?」
「嫌か」
「ううん、私嬉しいわ」
「…そうか」
「帰りましょう、ハーデス。それで、一緒にシエスタしましょう?」
「ああ、…ならばなまえ」
「なあに?」
「…、余の隣で眠るがいい」
「うん!ハーデスも私の隣で寝てね?」

ああ部屋がピンクにつつまれる



他所でやって、それから私を巻き込まないでください
(ミーノス、貴様…!なまえに手を出すなど)
(誤解ですよ、パンドラ様)

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