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コトン、とナイトの駒が斜めに動かせれた。あっ!と気付いた時にはもう遅かった。彼の唇が歌う様にたった一言を紡いだ。

「チェックメイト」
「…また、負けた…」

がっくりと肩を落とすとヒュプノスは可笑しそうに笑った。

「神に勝てるなんぞ思っていたのか、なまえよ」
「…そりゃあ、ずうーっと生きてるヒュ プノスに勝てるとは思ってはないけど、さ」
「甘いな、私は手を抜きはせん」

誇らしげに駒を私の目の前で揺らす仕草は様になってはいたが、子供じみていた。かみさまのくせに子供っぽいくて、 けど仕事をちゃんとこなし、タナトスの世話もしているヒュプノスに、私は恋をしている。多分、この感情はヒュプノス本人にもバレている。それを承知で、彼は私で遊ぶのだ。だからこうやって、タナトス曰く塵芥な人間とチェスを興じてくれる。からかわれてる、でも少しでも傍にいたくて、私も遊ばれるのだ。

「お前は本当に、変わった人間だな」
「誉め言葉として受け取っておきます」
「…ふっ、神にそこまで言える人間なんぞ、お前くらいだ」

笑みを溢し、ヒュプノスは駒をズイっと私の唇に押し付けた。声を発するよりも先にその駒は私から離れ、次にヒュプノスの唇へと誘われた。

「…………え」
「次の勝負で勝てたら、褒美をやろう。 励めよ、なまえ」

え、間接ちゅう……、え、えぇえええぇえぇ!? 不敵な笑みを浮かべたまま、ヒュプノスは今いたテラスから部屋の中へと移動してしまった。そこに残されたのは真っ赤に染まった顔をした私と、キスしたナイトの黒い駒だった。



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