「なまえばっかり恋をしてズルイ。」
「気付かないアイオロスが悪い。」
「分かりにくいなまえが悪い。」
「それが私なのよ。
悪かったわね。」
「でもそこが好きだよ。」
「なっ、」
驚いた拍子に腕の力が抜けた。
取っ組み合った腕はすり抜けてアイオロスに抱きしめられる。
心臓の音がやけに早く聞こえた。
それだけなのに、やっぱりこの人を好きなのだと改めて思う。
「なまえ、私と最後の恋をしよう。
きっと私はなまえをまた泣かせるかもしれない。
でも私もきっと君の為に泣くよ。」
「……信じても良いの?」
「だってなまえが好きになったんだろう?
信じてよ。
そして私を信じてくれたなまえを愛させて。」
「今さら都合が良すぎる。」
「知らなかった?
世界は意外とご都合主義で回ってるんだよ。」
「でも私の都合では回ってくれないわ。」
そっぽを向くとアイオロスが頬に手を添えた。
私より大きくて節ばってささくれた手。
それがあったかくて気持ち良かったので、近付いてきた顔に思わず目を閉じた。
「結局俺達当て馬だよなー。」
「ミロ、そう言ってやるな。」
「カミュの言う通りだぞ。
ミロはミロで新しい恋を探さないとな。」
「アイオリアだって。」
「私達は揃って失恋だな。」
「そうだなー…
って、カミュも!?」
(気付いていなかったのか…)
世界は意外に誰の為にも回っていないようだ。
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