ドアノブに手を掛けたところで後ろから抱き留められた。
今ここでこんな事が出来るのは一人。
彼だけだ…
「離して!
馬鹿にしないで!」
「嫌だ。」
「嫌がらせにしてもやり過ぎよ!
今ならなかった事にするから…!」
「嫌だ!」
抱き留める腕に力が篭る。
私がいくら跳ね返そうとしても腕の力は緩まない。
もがいてももがいてもアイオロスは離さなかった。
「……もう、勘弁してよ。
私が悪かったなら謝るからさぁ……」
「悪かったのは…私なんだ。」
「……」
「嫌いだなんて言って、すまない。」
「……本心でしょう?
だから、いいの。」
「違うんだ。
あぁっ、もう!
こんな時何て言ったら良いんだ!?」
訳が分からず体の力が抜ける。
この人は本当に何がしたいんだ?
立ち尽くしていると、今度は正面から抱き直される。
っ、顔が近い!
ちょ、何なの?
どうしたの!?
「……ゴメンなさい。
貴方がそんなに怒っているとは思わなかったの。
私、もう貴方に顔を見せないし、出来るだけ不快にさせないようにするわ。
ゴメンなさい、私がもっと大人だったらこんな嫌な思いはさせないで済んだのにね。」
また涙がこぼれていく。
恋の終わりってこんなに切ないものだったのね。
貴方は優しい人だから、私が好きになったくらい素敵な人だから、こんな私にどう言おうか迷っているのよね?
そんな顔をさせたい訳じゃなかったの。
本当にゴメンなさい。
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