「……なまえ、顔を上げて。」
「カミュ…?」
「もう一度だけ、信じてみよう。
なまえが選んだんだろう?
もう一度だけ、な。」
「……駄目だよ。
私はもう辛いの嫌。」
「…なまえ、ケジメ付けてこい。」
「ミロまで……私はもう嫌なのっ。
私はもっと、もっと…!」
こんな嫌な女じゃなかった!
こんなに醜く泣き叫ぶ女じゃなかった!
「なまえ!」
カミュから引き離される。
肩を思いっ切り引っ張られるとアイオロスの顔が飛び込んできた。
なんで貴方がそんな顔をするのよ!?
なんでそんなに泣きそうな顔をしてるのよ!
泣きたいのは私だわ…っ。
「は…なして!」
「ミロ、カミュ、悪いがなまえは連れていく。」
「アイオロス。
これ以上なまえを泣かしたら俺はお前を許さないからな。」
「私もさすがに捨て置けなくなる。」
「……わかっている。」
「離して!
嫌!嫌だってば!
ミロ!カミュ!
お願い!」
泣き叫ぶ私の意見は聞き入れられない。
私は一人自分を守るように体を丸めるだけだった。
「――なまえ。」
「…………」
連れて来られたのは人馬宮。
おそらくプライベートルーム。
私の前にはアイオロス。
……最悪だ。
「顔を上げて、なまえ。」
「――嫌。
絶対嫌よ。
人が悪いわ…!
さっきの話も聞いていたのでしょう!?
私を嫌いだと言って、あんなのを聞いて…
さぞ楽しかったでしょうね!
私は帰るわっ。」
顔を隠したまま立ち上がりドアへ歩いて行く。
こんな感情向きだしの自分は知らない。
こんな嫌な女、私じゃない。
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