「―――なまえ、泣かないで。」
ミロに頭を撫でられる。
涙も拭われゆるゆると目を開けた。
「なまえ、これでも飲んで落ち着け。」
「ん、ありがとうカミュ。」
あったかい。
甘いココアだ。
優しい匂いと暖かさでまた涙が浮かんできた。
「なぁなまえ、そんなに泣くなよ。」
「だって嫌いって言われたの。」
「……なんでアイオロスかなぁ。
俺だったら絶対なまえを泣かさないのに。」
「ミロ、仕方ないだろう?
ほらお前の分だ。」
「サンキュ。
でも本当に何でアイオロスなんだ?」
受け取ったココアを一口飲む。
心まであったまるようだ。
「……気付いたら目で追っていたの。
よく分からないけど、これが恋なのかなって。
でも好きな人に一番言わせてはいけない言葉を言わせてしまった。
私がもっと大人にならなくちゃいけなかったのよ、この恋は。」
「俺、なまえは充分大人だと思うけどな。」
「なまえは少し分かりにくいからな。
ちょっと意地っ張りだけど、慣れるととても可愛い。」
今度はカミュに頭を撫でられる。
髪を梳かすように、するすると。
「私がもっと素直で見た目も言動も女らしければ良かった。
そうすればもっと違ったかもしれない。」
「かも、とかもし、はナシだ。
それにそんなのなまえではないと私は思うぞ。
なまえはそのままで充分過ぎるくらいだ。」
「……私、2人のどちらかに恋すれば良かったのにね。
駄目ね、こんな事では。
やっぱり私が悪かったの。
本当は聞きたくなかった、嫌いなんて。
心が痛いよ。
辛い、悲しいよ…」
涙がまた溢れる。
恋ってこんなに辛いものだったかな?
こんなに心が痛いものだったっけ?
こんなに悲しくて涙が止まらないものだった?
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