「……私もう行くわ。
これリアに渡しておくから。
みんなでどうぞ。」
「本当にすまない。
今度は共に。」
「いーから。
じゃあね。」
ほら、リアには笑って手を振る。
なんて外面の良い奴なんだっ!
「………兄さん、なまえに会ったらちゃんと謝ってよ。
言い過ぎだ。」
「私は悪くない。」
「じゃあ兄さんはやっぱりなまえが嫌いなんだね。」
「…嫌いだよ。」
「そう。
ならこれ、兄さんは手を付けちゃダメだからね。」
「これって…」
さっきなまえがリアに渡した袋を見る。
中はドリンクボトルにハチミツレモンだ。
なんてベタな差し入れ…
「これは俺達が食べるから。
なまえは兄さんが思っているよりずっと優しいし、女の子らしいよ。」
「なっ、だってランニング途中に水を飲もうとしたらダメだって…」
「兄さん、それは以前カミュにも言われただろう。
運動の時は冷たい物をのんではいけないって散々。
それなのに飲もうとしたのは兄さんだ。」
「それ以外にもあのハチミツレモンだって…」
「あれも兄さんがもっと甘い方が良いだの何だのといちゃもん付けてた。」
「………………」
「もっと言うならカップケーキの時もアップルパイの時もムサカの時もスブラギの時も。
あーでもないこーでもないと文句を付けていたのは兄さんだよ。」
「………………………」
リアの視線が痛い…!
しかしアレは文句ではなく意見と言ってほしい。
「…兄さん、これは明らかに兄さんが悪い。
早く追い掛けて謝っちゃいなよ。」
「しかし追い掛けたところで何を言っていいか…」
「さっきは悪かった。
ちょっと言い過ぎた。
で、良いんじゃない?
時間が経つ程気まずくなるよ。
本当は嫌いじゃないんだろ?」
リアに背中を押される。
弱いんだよなぁ、リアのこの顔に。
まぁ確かに私が悪くないとも言えないしな。
なまえの居場所を探る。
そうして獅子宮を駆け出した。
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