<なまえ side>
「…………いっちゃった。」
えっと、よく分からないけど…ロスが夕飯を食べていけって言ったのよね。
多分この壁のリフォームのお礼だろう。
これも仕事の一環だから気にしなくて良いのに…
温くなったコーヒーを飲みながら人馬宮が終わったら次は処女宮の天井か獅子宮の床。
何故か穴ぼこだらけなのは下の方の宮ばかりだ。
白羊宮や巨蟹宮は早々に天井だけは修理されたらしい。
宮の主達が雨が降ると不便だからと適当に穴を塞いだそうだ。
リアは雨漏りしないからと後回しに、シャカは気にしないので放置。
…アバウトだな。
その時の私は気付いていなかった。
これから始まるアイオロスの接待攻撃に。
後になってリアから聞いたのだが、ロスは相当なフェミニストらしい。
私から言わせればそれは女好きの部類に入ると思う。
そうリアに告げるととても納得いったように頷いた。
今まで良い表現を思い付かなかったが、これでしっくりきたらしい。
今回を皮切りにロスもちょくちょく双児宮を訪れるようになった。
とにかく構いたいらしい。
もうそんな歳でもないから遠慮すると言ったのだが、引き下がってくれなかった。
……どうしようか、これから。
「なまえー、いるだろう?
一緒にお茶にしよう。」
「ふむ、アイオロスとアイオリアが来たな。
甘い匂いがする。
チョコレートの匂いだ。」
「………シャカ、貴方の嗅覚は犬並ね。」
「小宇宙の成せる技とでも言っておこう。」
「ロスとリアを迎えて。
私、お茶いれてくるから。」
「わかった。
わたしはほうじ茶が良い。」
「最近マイブームね。」
「今日はコーヒーの方が良いと思うよ。」
「なんだアイオロス。
もうここまで来てしまったのかね。」
ひょっこりロスが顔を出す。
後ろにはリアが少し呆れた顔で立っていた。
「いるのは分かってたからね。
はい、今日のお土産はヌガーだから。
濃いめのコーヒーのが良いと思うよ。」
「ありがとう。」
賑やかな双児宮にコーヒーの匂いと甘い香りが広がる。
ダイニングには人の住む家特有の温かさがあった。
5/5
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