「ここの壁なんだけどね。」
「これ…」
「13…いや、もう14年になるのかな。
あの時の、遺言…かな?
これを見えなくしてほしいんんだ。」
「ちなみに、何て書いてあるのか聞いても良い?」
「…少年達よ、君らにアテナを託す。
といったところかな。」
ふむ……確かに遺言なんて物がいつまでもあったら自分的にも当事者達も気になるだろう。
しかしこの遺言。
薄い壁の下、表面の壁のを剥いでさらにその下の土台のブロックに刻まれている。
よくこんな手の込んだ隠蔽を逃亡中のロスができたものだ。
「多分これなら直せると思うわ。
しかし当時はどうやって隠したの?
少なくとも十数年は誰にも見付からずにあった訳でしょう?」
「そうだね…
私も不思議だったんだけど、隠した記憶がないんだよね。」
「………怪奇現象じゃない、それ。」
「大丈夫、巨蟹宮ほどではないから!」
アハハと笑うロスに、あぁここは聖域だったと思い出した。
壁に死に顔が出るのも日常。
宮が迷路になるのも普通。
…そういうもんだと思い直した。
「…ま、せっかくだしできるとこまで今日は手を付けちゃうね。」
「ありがとう。
引き受けてくれるんだね。」
「任せて、本業よ。」
ブイッとピースとウインクをする。
とりあえず資料を置いて、必要な道具を取りに帰ろう。
久々だから腕が鳴る!
「それじゃあちょっと道具を持ってくるから。」
「その間にコーヒーでもいれて待っているよ。
いってらっしゃい。」
何故か張り切るアイオロスに手を振り階段を下りる。
どうやって直そう。
他の壁から同じ材質を移植して、隠そうか。
それともあの壁を作ったのと同じ石を探して自分で塗り替えてもいい。
どの道楽しくてしょうがない。
上がるテンションを抑えられず階段を駆け降りた。
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