Project | ナノ
皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
最近おはように、ございますをつければ敬語表現になるのに、こんにちはございます、とかこんばんはございます、のようにつけなくていいのかと疑問に思い始めたなまえです。

さて、なまえこと私は普段はギリシャの聖域ってところにある一二宮の上にある教皇宮という場所で働いている女の子!

誰が何といおうと女の子!頭脳は平均、容姿は平均誰がどう見ても平均の普通の女の子!反対意見は認めません!そして、そんな超普通の私の周りは毎日危険でいっぱい!

実はマフィアなのではないかと疑いたくなるイタリア男が私の部屋の扉を蹴り破ってくれて、それが目の前一センチの距離をすごい勢いで飛んでいったり、通称英雄の筋肉さんに押しつぶされて死にそうになったり、・・・こんなのはまだまだ序の口だが、つまりのこと、毎日それはもう苦労の連続でなまえちゃん、悲しい!


でも母さん、私はめげずに毎日頑張っているよ!


あんまりにも毎日がデンジャラスでクレイジーだから、最近ちょっと必殺技も覚えちゃったんだ!すごいでしょ?

何時の間にそんなの覚えたんだとかそういう疑問はノンタッチでお願いします。それで、その必殺技というのはとっても綺麗で優しいアフロディーテさんに教えてもらったもので、敵の喉笛に手拳を連続で叩きこむものなの!彼はにこにこと教えてくれたけど、残念ながらまだ試していないのが現実なんだ。だって常識で考えてみよう。あの人たちにそんなことをしたら1000倍返しで帰ってくるに違いないではないか!私の頭と胴体がさようならして別々の場所に同時に存在できるような状態になるなんてノーサンキュー!だからそんな必殺技で仕返しなんて恐ろしい真似、平均一般女子の私にできるものかばかぁ!


さて、大分話がずれてきたな。


そんな私にだが、一応恋人がいるのだ。

その相手というのが、聖域でアテナ女神、つまり沙織ちゃんを守る聖闘士たちの最高峰黄金聖闘士の双子座のサガさん、その人なのだ。


「・・・・・」
「・・・・・」


そして、そんな私とサガさんの間で、もはや恒例化している現象に、今晩もまたもや陥ってしまった。
それこそが、今の状況である。



サガさんは、それはもうよく働く。

日本人は働き過ぎたと世界中から言われているし、確かに過労死などというものは世界から見れば日本独特の現象である。世界の国々は日本に対してもっと休めといい、その結果今日では休日が増え、働く時間も減ったが、それでもまだ日本人はよく働いている。そして一応は日本人である私は、そんな周辺の大人を見て育ってきたわけで、それなりの仕事への意欲はある。

だが、そんな私から見ても、サガさんは明らかに働き過ぎである。日本の労働基準も裸足どころか素っ裸で逃げていくレベルだ。


・・・あ、素っ裸っていうのは別にサガさんにかけたわけではないから、そこは間違えられては困る。

だがそれにしても星矢君は戦闘中にサガさんのマッパをみたというし、しかも素っ裸で聖衣を纏ったと爆笑していた。だからか青銅君たちの間では、もはやサガさん=マッパというのは定義として定着しているようなのだが、私は未だに彼のマッパに遭遇したことがないのだ。いや、別にみたいわけではない。破廉恥な気持ちで言ったわけではない。

ただちょっと成人男性の行動としてはどうなのかと思っただけだ。いや、別に彼の行動に文句をつけるわけではないのだが・・・と、また話がずれてしまったな。



「サガさん、双児宮に書類を持たずに、休むために、帰ってください」

休むために、を強調していえば、サガさんは隈のついた目で私を見る。それにしてもすごい隈だ。森にサガさんを返せば、クマもどこかへ行ってくれるだろうか、なーんちゃって。・・・いや、何を馬鹿なことを考えているんだ、私は。疲れているのかもしれない。

一方サガさんは書類からは目を離したものの、握りしめたペンを決して離すことなく口を開いた。


「なまえ、君こそもう部屋に戻って休みなさい。何時間働いていると思っている?」
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」

そう。サガさんと私がよく陥る現象が、これだ。

それは互いを休ませるための新たな交渉戦争とも呼べるものだった。


「なんですか、どうしてそんなに執務室にこもりたがるんですか。どうしたら帰って休んでくれるんですか。腐ったムサカと腐ったウゾでも出せば帰って頂けますか」
「それはただの嫌がらせと言わないか?さて、なまえ、仕事中は上官の命令を聞くものだ。戦場でもそれが一般で、部下たる兵士は指揮官の言うことを聞く。分かったら君こそ部屋に戻って休みなさい」
「残念ながら私は兵士になった時は、ビビりなので指揮系統にはほとんど従わない兵士になるでしょうが、それでもよろしいですか?」
「お前らな、毎回毎回怖いから他所でやってくれ」


いつもの穏やかな雰囲気はそこにはない。


デスマスクさんがそれに、溜め息をつきながら書類にサインしたのをちらりと見てから、時計に目をやる。

・・・もう7時半だ。ここに正式な定時などないが、だいたい皆さんは4時にはいなくなる。主に勝手に、だ。なんて自由な職場なんだろう。まあとにかく、外はすでに真っ暗で、他の黄金聖闘士さんたちも皆宮に戻ってしまっている。

残っているのは、明日の任務の準備をしているデスマスクさんと、何が悲しいのか永遠と書類と愛をはぐくみ続けているサガさんと私のみ、だ。


そしてそれこそが最も問題である。デスマスクさんが帰り、私が帰った後、サガさんは一人になる。そしてそのまま全力で仕事に励む。そうして気がついたら朝になり、出勤してきた私とはち合わせると言うパターンになってしまうのである。正直な話、昨日の朝もこのパターンだった。昨晩はおとなしく帰ってくれたのだが、どうやら今日は一筋縄でいかないらしい。

「くまができています」
「小宇宙を燃やせばなんとかなる」
「そういう問題ですか」


ああ、もうこの際だ。はっきり言おう。

寝てくれ。

せめて四時間は寝てくれ。サガさんはホモサピエンスという生き物に分類されているのに、その睡眠時間が草食動物よりも短いとは一体どういうことか。ホモサピエンスという生物学上の問題を理解していないのか。いや、博識な彼に限ってそれはないだろう。
ということはやはり、そんなに仕事が好きなのか、といつも通りの台詞が頭をよぎって私は息をつく。


意を決した私は、机をばしりと叩いてサガさんを見る。

「そんなに書類と愛をはぐくんでいると、明日カミュさんに仕事馬鹿のグレープフルーツ野郎!って言われちゃいますよ」

さっと彼の手からペンを奪い取っていえば、書類をサガさんに手渡したデスマスクさんが私を見た。

「意味分からねえ。それ、どういうことだよ、なまえ」
「グレープフルーツ野郎じゃなくてどてかぼちゃでも構いません」
「ああ、脳味噌が不自由なお前に質問した俺が馬鹿だったのか?」
「フランスでグレープフルーツ野郎は侮辱語なんですよ!」


そういえば、それは知っているが何故そこにカミュが出てきたんだとデスマスクさんは言う。うん、実に良い質問だ。私も今不思議に思っていたところだったのだから!

だが、そんな私とデスマスクさんの間を小さな小刀が飛んでいき、デスマスクさんの足元にスコン、と良い音を立てて突き刺さった。

「・・・・・」
「・・・・・」

突然の凶器のご登場に私とデスマスクさんが顔面蒼白にして顔を見合わせる。これを飛ばしたのは私じゃない。もちろん彼でも。それが表わすのはつまり、と最後の一人、サガさんを見れば、彼はフッと笑みを浮かべた。

「デスマスク、お前の手を煩わせるようで大変恐縮なのだが、なまえの脳味噌は不自由ではないとそのつるつるの脳にその彫刻刀で刻み込んでおけ。ああ、それからこれくらいのほうが可愛いということもな」
「あれ、なんだろう。フォローされているようでされていない気がする」

コーヒーに手を伸ばしたサガさんが鼻で笑いながら言った言葉に少し顔が引きつる。

というより、私はそろそろ認めるべきなのか?自分が馬鹿だったと言うことを。

おかしいな・・・、成績も中の中だったはずなのだが、いつのまに私は馬鹿になったんだ?だがそれにしてもこの世界に来てから、ほとんどの人に馬鹿って言われている気がする。

そして今日はとうとう脳味噌が不自由だと。なんて失礼な!と反論したいが、デスマスクさんは口が上手い。口頭で勝てることはないのだと理解しているから私は話を元に戻すためにサガさんをみた。



「とにかくサガさん!朝刊の天気予報に、今日は早く帰らないと帰りに99.9%の確率でぬかみその嵐が直撃って書いてありましたよ!貴方にめがけてね!」
「地味に嫌だな」
「ああ、相当臭うに違いないぜ」

俺はもう帰る、といって部屋から出ていったデスマスクさんを二人で見送った後、執務室に沈黙が降りる。


それに先にギブアップしたのは私だった。弱いとか笑ったやつ前に出ろ。鼻を陥没させちゃうぞ!だからそれが嫌なら、常識的に考えてみてくれ。サガさんの精神力に私が勝てるわけがない。

だったら戦法を変えればいいのだ。交渉作戦に変更だ。これも決して私が有利なわけではないが彼との沈黙耐久レースよりは幾分マシだというものだ。


「・・・分かりました。そんなにいうのでしたら、サガさんが帰るまで私もこちらでお付き合いします。夜が更けようが朝になろうが書類の片づけを手伝いましょう」
「なまえ、それは駄目だ。女性の夜更かしは肌の大敵だとアテナが仰っていたぞ」
「沙織ちゃんは貴方に一体何を言っているんですか・・・」

というか、どんな会話の流れでそんな肌の話になったのかまったくもって不思議でならない。

二人して美肌の相談でもしていたのか?確かに沙織ちゃんは女の子だし、肌が綺麗だ。だからといって、サガさんまで肌に気を使っていたらちょっとそれは気持ち悪いな。どこの草食男子(笑)だ。草食男子には(笑)を忘れてはいけない。はっきり言ってネタにしか思えない存在だし、気持ちがわる・・・おっと、これ以上は禁句だな。


「さあ、サガさん!二択です。私と仕事をするか、帰って休むかです」

こんなにも簡単な二択じゃないかと彼を見れば、サガさんは一瞬黙り込んだがやがて背もたれに寄りかかって息をついた。


「・・・分かった」
「サガさん!」
「その代り、君も仕事は止めなさい」

苦笑したサガさんに、頷く。

彼はそれを見て、今日初めてペンを置いて机の上を片付け始めた。私は手に持った書類をとりあえずファイルに戻し、本棚へ返した。さて、では帰ろうかと思ってサガさんを振り返れば、彼は目を泳がせて実に不思議な表情を浮かべていた。


「どうしました?」

そう聞けば、何故か彼は実に気まずそうに私を見た。一体どうしたというのか。まさかパンツ見えてるぞ、とか?いやでも今日はズボンだからそれはない。じゃあ・・・、お前、太った?とか?き、昨日一人でアイス三本も食べたのがまずかっただろうか。いや、でもその分動いているから大丈夫だ!・・・と切実に思いたい・・・!

「・・・」

そんな私の考えをよそに、サガさんは口を開いた。


「・・・そのだな、なまえ」
「・・・?なんですか?」
「この後、なにか予定は?」
「予定?いえ、特には・・・」


この後は適当に夕食を取ってシャワーを浴びて眠るつもりだ。しいて言うのなら、少しギリシャ語の勉強をしようかと考えていたくらいで、予定なんてないと彼を見れば、サガさんは私の言葉に微笑みを浮かべた。

「では、アテネまで食事に行かないか」


彼がそんなことを言うのは実に珍しいことで、私は驚いてつい固まってしまったのだが、サガさんはそれを拒否ととったのか不安げに顔を覗きこんできた。


「なまえ?」
「あ、い・・・、行きます!むしろご一緒させてください!!」
「そうか」


慌てて返事を返せば、安心したようにまた微笑まれて、僅かに頬が熱くなる。なんだこれ、イケメンパワーか。
少し早くなった心臓が落ち着かなくて、それを忘れようと私はサガさんに向き直り聞いた。


「どこに行きますか?」
「なまえ、何か食べたいものはあるか?」
「アイオロスさんがプラカのビザンティノってお店のスブラキが美味しいって教えてくれたんですが・・・」
「では、そこにしよう」

一度私の頭を撫でたサガさんは、そのまま荷物をまとめ始める。が、私としては、彼はそれでいいのかと不思議に思って再び口を開く。思えば、それが間違いだったのだ。

「サガさんは何か食べたいものとかないんですか?私はそれで・・・」


構わないのだが、という言葉も彼の微笑みに、呑み込まれた。


「なまえとの食事なら何でも構わない」


せっかく少し落ちついていた心臓が、今度はさらに早鐘のように打ち始めてしまった。



彼は確信犯に違いない
(ああ、もう!大好きだ!!)

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