拝啓、なまえ様
早いもので、キミがオレのところに現れてから一年が経ちました。
今年も去年と同じく暑いです。昨日も台風が来て去年と同じだなんてことを考えていました。あの時から、時折なまえのことを考えます。それでやはり、中学二年の冬、雨の中でお前は泣いていたんだってことを思い出しました。考えなければ、そして思い出さなければ、いつか忘れていくのでしょうか。だけどオレは忘れたくはありません。なまえと過ごしたあの頃の日々はずっと覚えているでしょう。
あれからまだ時折、傍になまえがいるような気がします。気のせいだと分かっていても、つい目が探してしまいます。止めるようなことがあったら騒ぐのだろうと思うので、バスケはまだ続けているし、来週大会があります。黒子や緑間たちとは明日花火大会に行く約束をしています。それなりに忙しい日々だけど、毎日きちんと過ごせていると思います。
そういえばこの間黄瀬が墓参りに行ってケーキを供えたそうだけど、炎天下で不安になってあとで確認に行ったら蟻に美味しく頂かれていたようだよ。なまえが見たら発狂ものの光景だっただろうね。だから、オレは代わりにお茶と花を持っていく事にする。さすがに食虫植物はどうかと思うけど、お前が好きだった向日葵を持っていくよ。覚えているかい。中学校の時なまえは向日葵を頭にさして「ぎゃあああ頭から花が生えて来たよ!」と騒いでみんなをドッキリにしかけようとして逆に「やだなまえ! 向日葵虫がわいてる!」とドッキリにかけられていたな。いつもそんなことばかりで、本当に笑わされたよ。楽しくて、愛しい、大切な思い出です。
あの夏、あのバスケットコートでキミに出会えたことが、奇跡みたいなものだとオレは分かっているつもりだけど、まだ時々なまえに会いたくなります。自分勝手だとは思いますが、こればかりはどうしようもないと思うので許してください。別に心配はいりません。オレは元気だし、日々楽しんで一歩ずつ進んでいますので、せいぜいそちらで楽しく笑っていてください。いずれそちらに伺ったときにまた昔のように馬鹿をやる姿を見せてくださいね。
敬具
赤司征十郎。
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