南拓に見えるけど拓南






デートに誘ったらテスト前だから無理だと断られてしまった。久々に休みだからと浮かれていたけれど、確かにテストがある。けど、そのテストはまだ1ヶ月も先だと言えば「もう一ヶ月しかないだろ」と冷たく言い放たれて神童は口を噤んだ。
仕方なしに妥協案というか押し切った形で南沢の家で勉強をすることにした。折角二人っきりだというのに、南沢は神童のことなど居ないように扱って淡々と参考書と向かい合っていた。
それが面白くなくて、神童はシャーペンを南沢の腕に突き刺した。勿論浅く軽く。それでも南沢の集中をこちらに向けるには十分で「何だ?」と顔を上げて南沢は神童を見た。

「ずっと気になっていたんですけど、どうして南沢さんはそんなに内申を気にするんですか。将来の夢とか何です」

駄々をこねる子供みたいだと自覚しながらも彼の気を引きたくて質問した。

「そんなの決まっているだろ、総理大臣になるためだ」

何でもないことのように南沢は教えてくれた。だけど逆にそれが変にも思えた。からかっているのか、本気なのか判断が出来ないで神童は「冗談ですよね」と念押しするように聞いた、
シャーペンを置いて、南沢は怠そうに前髪を触った。どっちでもいいだろ、解釈は好きに考えろ。それだけを言うと、またシャーペンを取って参考書に視線を戻した。
それで会話はおしまいだという雰囲気を醸し出しながら問題を解いていく南沢が面白くなくて、また神童はシャーペンで突いた。

「マニフェストはどうするんですか?」
「同性結婚許可」

だから偉くなって総理大臣になるんだから勉強の邪魔するな。視界に神童を入れることなく南沢はそう言い切った。
嘘でも冗談でも彼の口からそんな言葉が出てきたことに嬉しくまた驚いて、刺していたシャーペンを無意識に更に深く刺していた。イタッという南沢の声で慌てシャーペンを皮膚から離す。

「すみません」

刺してしまった掌を引き寄せて舐める。その様子にぎょっとして南沢は「血は出てないから大丈夫だ」と言って振り払おうとしたが、神童は逆に引き寄せて南沢にキスする。机が邪魔だ。

「南沢さん、したいです…」
「勉強が終わったらな」

切羽詰まった表情の神童にそういって南沢は妖しく笑った。










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