※シンデレラ風パロ ※魔法使いヒロトと未来王妃リュウジ 幸せを願うのが愛ならば 優しく微笑みながら、リュウジはヒロトに向かってケーキの乗った皿を差し出した。 ケーキといえども、リュウジの食べようとしていたケーキは高級品で万単位の物であって、ヒロトみたいな召し使いの魔法使いが食べられるような品物ではない。 例え、それが見た目はただのショートケーキだとしても、使われている素材も作った人も一流。 そんな訳で、せっかく優しくしてもらったのだが、ヒロトは曖昧に微笑みながら『残念ながら、俺が食べる訳にはいきませんよ』と断った。 リュウジは表情を曇らせて、差し出していたケーキにフォークを差し込むと一口分を切り取ってパクっと食べてしまった。その動作ひとつですら、拗ねた様子が伺えて可愛くて瞳の指導権を奪われたかのように、リュウジからヒロトは目が反らせなかった。 『ヒロトは頭が高すぎるよ』 『今と昔は違うんですよ。貴女は今度此処の国の王妃となるんです。そんな方とただの魔法使いが変な関係だと誤解されれば、この結婚は無くなって私も貴女も家族も苦しんでしまいます』 そうやって説明すれば『俺には難しい話はわからないよ…』と、リュウジは可愛らしく唇を尖らせて、また一口ケーキを食べては咀嚼する。 リュウジはヒロトの幼なじみで、この国の王妃となる。元はヒロトと同じただの町民の一人だったのを、ここの国の王、グラン様に一目惚れされ告白、プロポーズされた、そしてこの度結婚する。王の告白を断わることも出来ずに、リュウジはその申し出を受けた。 その時に寂しいからと言って、王に頼み、ヒロトを専属の魔法使い兼召し使いとして城に住まわせてもらった。 ずっと好きだった。言わなかったことを後悔したが、既に遅かった。 『ねぇ、後は何の準備がまだなの?』 『ドレスと靴ですよ。最高に綺麗なドレスと靴を作ってますので、後少し時間がかかります』 『楽しみだ』 そう言ったリュウジの顔は、声や言葉とは裏腹に雲っていた。 そんなドレスや靴なんか、永遠に出来なければ良いとさえ思う。ずっとヒロトと一緒が良い。 『後少しですが、もう形は出来てます。一度、サイズが正しいか着てみてみます?』と言って、ヒロトは懐から古びた木の枝を取り出した。その枝は魔法の杖だ。 リュウジが止める言葉を発するよりも早くに、ヒロトは杖を一度左右に振った。すると、その場には綺麗な純白なドレスとガラスの靴が置かれている。ドレスはシンプルながらも所々に真珠等が縫い付けられており、きめ細かいレースがふんだんに惜しげもなく使用されていた。 『ほら、着てみて?』 ヒロトはドレスと靴を差し出したが、リュウジはソレを受け取ろうとはしなかった。ヒロトは苦笑して、『此処に置いとくから、着替えたら呼んでよ』と言って、部屋から出ていこうとした。 だけど、それはリュウジがヒロトの服を掴んだことで未遂で終わった。 くるりと振り向くと、リュウジは俯いたまま強く服を掴んで立っていた。 体調でも悪いのかと心配になって、肩に手を置いて少し屈み込み、顔を覗き込んだ。『体調が悪いのですか?』と声をかけようとしたその唇は、リュウジのキスによって動くことなく終わってしまう。 『リュウジ!』 慌てて体をリュウジから離して思わず叫んだ。 リュウジは、ただ泣きそうにそこに立ち尽くしている。 好き、声が出なかったが唇だけを動かした。それでもわかったのか、ヒロトは呆れたような悲しいような訳も分からないような顔をする。 リュウジはドレスと靴を取ると、抱えて『ずっとヒロトが好きなんだ。こんなドレスも靴も結婚式も無くなってしまえば良いなんて、俺思っているんだ』と話して、泣いた。 瞳から溢れる涙をヒロトは見つめるだけで、拭うことは出来ない。 『僕は君に笑ってほしくて魔法で願いを叶えてあげたんだ。だから君はその綺麗なドレスとカボチャの馬車で王子様に会っておいでよ』 そう言って、ヒロトは悲しそうに笑った。 昔の話を発掘したのでパート1 凄く恥ずかしい |