※ヤクザパロ
※捏造・成長有り



大きい組織だけれど、そんな毎日派手にドンパチする訳にもいかないから、普段は集金とかそんなあまり派手なことはない。下っ端なら尚更そんな雑用みたいなことをしなければならないだけだ。
思っていたよりも平々凡々な呑気な生活に今更ながら落胆しながら、狩屋は煙草を一服した。ふーっと息を吐き出したら、白い煙が出てきて消える。煙草も最近吸う量が増えた。

「ヤクザ辞めたいんだけどさ、どうすればやめられると思いますか、剣城クン?」
「小指でも切れば良いんじゃないのか、煙草一本寄こせ」

近寄ってきた剣城はそう言うと、狩屋が差し出した箱から煙草を一本抜き出した。ライターも借りて火を付ける。部屋の空気が更に濃くなった。
同じ年なのに、少し先に入っていてそれでいて功績を挙げていて、俺よりも少しランクが上だ。ちょっとだけすましている性格だけど、なんだかんだで付き合っている。
また煙を吐きながら狩屋は「小指か」と呟いた。小指は余り使わないし、要らないから小指くらいなら切っても良いかもしれない。拳銃で撃つときも不要だ、そもそもヤクザ辞めたら銃も撃たないか。小指以外の指を折りたたんで、小指を折り曲げたり伸したりを繰り返した。
ぼんやりと小指を眺めている狩屋に「本気で辞めるのか?」と剣城が声を掛けた。頷けば「神童さんだから指落とさなくても大丈夫だと思うが」と言っても、狩屋は小指を見たままだった。狩屋の爪は女爪に近く、細長くて綺麗だった。

「勿体ないな」
「何が?」
「お前の小指」

勿体ないなんて、使わない指なのに。だけど多分褒められているんだろうから、ありがとう、と返しておく。
そろそろ集金に向う時間だった。彼は俺よりももう少し危険な仕事とかさせられるんだろうな、と考えたら羨ましいから嫉んでしまう。
煙草の火を灰皿に押しつけて消火する。火は消えたけれど、まだ部屋は脂臭い。剣城は狩屋の様子をじっと見ていた。視線を感じて狩屋はふり返ると視線が交差したが、視線を剣城は反らさなかったからなんだか反らしたら負けたような気がしてジッと見た。そのまま5秒くらい見つめ合ったままだだったが、時間が押してるので「何か言いたいこと有るなら言えよ」と狩屋が根負けして言った。

「死なないように気を付けろよ」
「俺よりも剣城クンの方が危ない事やってるだろ。まぁ、お互い死なないように気を付けようか」

暇だからって煙草の吸いすぎで肺ガンになってぽっくり逝ってしまいそうだな、と考えながら階段に向かって狩屋は歩き出す。後ろからまだ煙草の匂いがする。
禁煙して、金貯めて、2人でどっか逃げ出したい。そのためだったら要らない小指なんて切ってしまえるから、神童サンにダメ元で辞めたいって言ってみよう。そう思いながら階段を降りていたら、後ろから足音が聞こえた。「なんで付いてきてるんだよ」「今日は非番だから付いて行ってやる」と言って剣城は横に並んだ。
集金に向かっている時に「小指は赤い糸があるから切るなよ」と小声で言われて、思わず乙女チックと言ったら軽く殴られた。こうやって二人っきりの時だけ、別に派手で危険なことが無いこんな平凡な生活も悪くないかと思えた。






匿名さんのリクエストで『狩屋と誰かでヤクザパロ』
ヤクザってよく分からなかったんですけど、こんなイメージです

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