部活をサボって屋上で一人でグラウンドを見ていた。なんだか部活に行きたい気分でも園に帰りたい気分でも無くて、逃げ込んだ先がここだった。
持参した御菓子を食べながら、サッカーボールを追いかける他のメンバーを見ているとなんだか滑稽だ。本当に小さくて玩具が走っているように見える。そして馬鹿みたいだと思った。サッカーは好きだ、好き、好きだけどどうしようもなくたまに馬鹿らしくも思えて全てを投げ捨てて消えたくなる。
キィっと鈍い音がしかたら少しだけ身体を動かして扉の方を見たら、剣城がいた。グラウンドにいないと思っていたけど、なんでこのタイミングで会うんだ。

「げっ」
「サボリか」
「そうだけど、剣城クンだってサボリだろ」

狩屋がそう言えば、俺は監督に休むってちゃんと言ってきた、と鼻で笑いながらそう剣城は言ってから近寄ってきた。「言っておくけど、結構サボってるのバレてるからな。監督は目を瞑ってくれてるだけだ」「え、、まじ!?」「嘘だ」危うく驚きすぎて持っていたペットボトルを落としそうになったのに嘘だと言われて安堵するが腹も立つ。
今日だけじゃなくて、剣城クンはいつも俺を揶揄している気がする。気のせいかもしれないけれど、今日は不愉快な気分なのに更にソレを増大させられた気分だ。

「いっつも思うけど、剣城クンって俺のこと馬鹿にしてるだろ。すっごくウザイ、腹立つ」
「それで?」
「なんなの、何がしたいわけだよ?俺のこと見下してるわけかよ?」

言いたいことがあるなら言ってしまえ、と心の中で何かが吹っ切れた。ずっと溜め込んできた鬱憤とか不満とか全てを言ってしまいたい。言ってしまい言ってしまえ。
そう思ったら口から思ってもいないような、けど多分心の中で思っていたこと、それをひたすら言っていたのを、剣城は何も言わずに聞いていてくれた。

「だから?」
「だから・・・・だけど、お願いだから、俺を見捨てないでくれよ」

剣城はそれを聞くと少しだけ口角を上げてから溜息を吐いて、狩屋の頭を撫でて笑った。多分呆れているんだろうなぁ、と思ったが今回はそれについてそれ以外何も思わなかった。
フェンスの寄りかかってから下を眺めた。まだボールを追いかけているチームメイト。「俺さぁ、捻くれているよね。」全部、俺が悪いんだって知っているけど、それでも治らない。消えたいのは過去から逃げたいから。「それでも良いだろ別に」そう言う剣城の声は笑っていた。意外と笑うんだ、横顔を見て思う。
そして、案外剣城クンの隣は落ち着く。天馬とか影山のマイペースには呆れて着いていけないが、これくらいの距離感とか踏み込んでこない感じが心地良い。

「そう言えば、なんで剣城クンはここに来たわけ?」
「お前が今にも飛び降りそうだったから、怖くかった」

剣城の顔は僅かに曇っていて、それが逆に綺麗だった。「気に掛けてくれてるって取っても良い?」そう言う狩屋の顔はいつも通りに戻っていて、心配して損だったかもしれない。そうだ、と言えばその顔が嬉しそうに綻んで、口元が綺麗だった。だから、と言い訳してから、狩屋にキスした。好きだ、と言えば「することと言うこと逆じゃないか」と狩屋が言ったからバーカっと言ってもう一度キスをした。










まおさんリクエストで片思いから両思いの京マサ。
こんな感じで良いのか不安ですが、リクエストありがとうございました。

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