捏造/基山緑川22歳狩屋11歳



いつもと同じ場所でサッカーボールを蹴る。軽く蹴りあげれば、上へと高くはね上がって落下する。
唯一持ってきた私物で大切な物だから、誰にも触らせたくないから、いつも一人でボールを蹴る。相手は壁。
壁に影が映る。子供のものとは違う大きな影に、マサキは思わず振り返った。真っ赤な髪と緑色の髪、見知らぬ顔立ちに「誰?」と真っ先に出てきた言葉はそれだった。

「吉良ヒロト。君はマサキ君だよね、はじめまして。」
「緑川です、はじめまして」

吉良ヒロト。名前も知らない奴らが「今日はヒロトさん来ないの?」と頻繁に言っていたけれど、「ヒロトさん」はまさかこの人だったのかとまじまじと顔を見れば、間違いなく憧れだった日本代表だった基山ヒロトさんだった。
本当はマサキ君が来る時に来ようと思っていたんだけど、仕事で来れなくてごめんね。屈みこんで目線を合わせる。目を見れば悲しい色を含んでいて、ヒロトは寂しくなった。

「ねえ、俺達の子供になってくれないかな?」
「俺、達?」

理解出来てないマサキに、緑川は指差しながら「俺とヒロト」と言って微笑んだ。
ホモなの?かと言ってしまった自分が幼稚に見えて、言ってしまってから慌てて口を噤んだ。2人は言われたことをまったく気にしてないようで、表情1つ変えないで笑っていてマサキは安堵した。

「まぁ、ホモって言われたら言い返せないな。俺達は男同士だし子供は授かれないから、マサキくんに子供になって欲しいんだ」
「そんなこと出来るわけないだろ・・・」

この世界が難しいことは子供である自分でも知っている、だからここに自分は居る。あのね、ヒロトは語りかけるように話した。自分が吉良の実の子ではないこと、同じように人が信じられなかったこと、支えてくれた人が居たこと、おひさま園の子供はみな家族だということを。「血縁的に父さんと俺は家族じゃないし、法的には俺と緑川は家族じゃないかもしれないけれど、俺にとってはもう家族なんだ。だから、マサキくんも家族になって欲しいんだ」そう言って、マサキをヒロトは抱き寄せた。
緑川は箱を渡した。箱は茶色の包み紙でくるまれていて中身は分からない。受け取るのを躊躇するマサキに緑川は箱を持たせた。

「サッカーボール。マサキくんはサッカーが好きだって聞いたから。このボールもぼろぼろだから代わりに使ってくれよ」

マサキくんはきっと立派なプレーヤーになれるよ、と言って抱きしめていた身体を放して、改めてしっかりと顔を見た。初めてあったときよりも少し小柄になっているようで柔らかい表情になっていて子供らしくて、やはりどんなに意地を張っていても子供で、ずっと独りで戦ってきていたのだ。昔、父さんが自分たちにしてくれたようにこの子に愛を注ぎたかった。
「そろそろご飯だろうし帰ろうか、姉さん達が待ってるよ」と言って、立ち上がって背中を優しく基山に押されて帰るように促される。その足取りが少し軽かった。





















リクエストでエイリア組とマサキくんのお話。エイリアってよりか基緑の話。

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