※24歳 そこそこ高級な御菓子だったが、そんなことを気にするまでもなく不動はその御菓子を綺麗な人指し指と親指で摘み上げて口に放り込んだ。自分が食べたかったからと、不動が好きそうだと思ってわざわざイタリアから取り寄せた物だった。 1つ、また1つと御菓子が減っていく。鬼道が1つ食べる間に、不動は2つ食べていたから殆ど不動が食べいるが、鬼道はそれを気にする様子はない。 同じソファーに座って、同じテレビ画面を見ながら、同じ菓子を食べた。 「ねぇ、鬼道クン。ここはどうしてDFを下げた訳?」 御菓子を食べていた手を止めて、チャンネルを不動は掴み上げた。そして、その指でボタンを押してテレビを静止させた。画面ではグラウンドで選手が止まっている。 見ていたのはこの前の試合で、先制点を取られてそれにまた攻め込まれている場面。DFを下げるのは当たり前だと思っていたが、不動はそうは思わなかったらしく「ここはこの選手に取りに行かせてDFは下げないままでよくて、そしたらここが空いてるからすぐに攻め込んで行けたのに馬鹿なことしたな」と指を止まった画面に向けて細かく説明する。説明していて不動が手つかずの御菓子を1つ取って口に入れた。それを食べながら不動の言ったことをお復習いするように脳内でシュミレーションをしてみたら、不動の言ったとおりに事が運ばれる。 「流石だな」 「お前が抜けてるだけだよ」 そういって照れくさそうに不動ははにかんだ。そして照れていることを誤魔化すように一気に御菓子を摘み上げると、同じく一気に口に含む。あまったるい味で口が一杯になった。それをゆっくりと咀嚼しながら飲み込む。あめぇ、と言ってチロッと赤い舌を出してからテーブルの上にあったコーヒーを不動は啜った。 「じゃあ、その作戦をどうやて練習するかを・・・」 「その話も良いけど、ちゃんと今日の仕事は終わってるんだよな?」 ああ、まあ、一応は、と言葉を濁す鬼道を見て不動は睨み付けた。「監督になって忙しいのわ仕方ないが、あんたは一応社長なんだから仕事を疎かにするな」と言って、テレビの再生ボタンを押した。俺の仕事が増えんだよ、と小さく不動が不満を口ずさんだ。 静かだった部屋にまたテレビの音声が流れた。止まっていた選手はまた生き生きと動き始める。 社長と監督とプロサッカー。休業中だからと言っても忙しいのは十分に分かっているから出来るだけ手伝っているつもりだけどそれでも限界がある。後で苦労するのは鬼道だ。 「苦労かけるな」 「そう思ってるなら、これ見終わった後仕事しろよ。出来る奴は終わらせておいたから」 そう言って、また御菓子を手に取ろうとして止めた。最後の一個は鬼道のために残した。 ヒモでも良いけど秘書っぽい不動も良いと思う。 リクエストで鬼不で甘め、でした。 |