野良猫が蔦に足を取られていたので助けてやれば、引っかかれた。

「いたた。やんちゃさんめ」

くすくす笑いながら猫の尻尾を見送って、数週間前の実習ぶりに三反田に世話にならねば、と血の滲んだ手を痛みを誤魔化すようにひらひら振る。
いや、こんなもんは痛い部類じゃない。全然へーき。

「怒らないんだな」
「お?久々知先輩ったらいつからそこに」
「猫を助けてた所から。恩を仇で返されたのによく屈託無く笑えるな」
「はは、感謝されたくてやったんじゃねぇっすからね」
「やっぱり格好いいな…そういう所が好きだけど」

…。

「ん?今のもしかして告白っすか?」
「いやその…!……はい」

あ、はいなんだ。
えー、どうしよっかな。返事するべきだよね?久々知先輩かぁ…すっごくすっごく格好いい。けど。

「久々知先輩、ちょっと僕の好みじゃ無いんで…すんません!」

僕が好きなのは、格好いい人じゃなくて王子様なんすよ。



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