何はともあれ、今日こそは一年ろ組の子達を捜すべく竹刀片手に走っていると、一つの長屋に到着した。普通に考えて、此処が一年長屋なのかなと思う。

そしてノックの時間も惜しむ俺は第六感に従い着いた部屋の襖を行き成りスパンッと開け放った。

「「ひゃぁあああっ!!」」


開け放っ、たのだけれども…その、なんかごめん。
一年生がハムスターのように数人集まって身を寄せ合い悲鳴を上げた。ぷるぷるしてる。

「あー…突然ごめんな?俺は八代恒希っていうんだけど、君達一年ろ組の良い子達で間違いない?」
「は、はいぃ」

お、おう…必要以上に怯えられると俺としても罪悪感が湧き上がるぜ。凄ぇびくびくぷるぷるしてんだけど、この子達本当に忍たま?将来ちゃんと忍者としてやってけんの?ハムスター辺りに就職した方がいいんじゃねぇの?

「恒希さんは、天女様と浅実さんどっち派の人ですか…?」

はい?
天女様派…ってのはたぶん逆ハー補正かかってる奴等として、浅実さん?浅実さんってこの前のくのたまの子だよな?

「どっち派でもねぇかな」

浅実さん派って派閥が何なのかは知らねぇが、俺がそれに含まれてる事はねぇだろ。特別あの子とは仲良くねぇもん。
俺を未知の生物に遭遇したような目で見ていた一年ろ組の子達は目を見合わせ、こしょこしょと内緒話を始めた。何だこれ、超居た堪れない。え、俺が湯飲みだから?湯飲みだからいけないんですか?
と、俺が無意味に罪悪感に苛まれている間に話が終わったらしく、八つの目がまたじっと俺を見た。

「僕達、どっちも怖かったんです」
「天女様が好きな先輩達が変で、なのにそうさせる天女様は何でか好きで、」
「でも、浅実さんの言うことも怖くて、どうしたらいいかわかんなくて、」
「僕達元通り、がいいの、にぃ…っ」

一人が泣いたのを皮切りに、皆で身を寄せ合って泣きじゃくる一年ろ組の子達。
うん、そうだよな。元通りが良いよな。


それが幸せだよな。


「お兄さんに全部任せとけ」

俺は一年ろ組の子達を一纏めにして抱き締め、まだきょとんとしている彼等に、かつて何の根拠も無くても無条件に安心させられると言われた笑顔を見せた。
子供はきゃーきゃーわーわー騒がしく笑ってりゃ良いんだよ。

俺は使命感を胸に、竹刀を俺の部屋に戻した後、伊作さんと食満の部屋へと帰った。


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