(救済編@からAの間。食満視点)
(最初の「」は伊作が永遠と湯飲みへの愛を語っているだけなので飛ばしてもおk)



「それでね、昨日の夜中恒希さんに会って!僕、湯飲みが無くなったってずっと落ち込んでたじゃない?恒希さんがそれ届けてくれたんだよ!ああもうあの湯飲み、僕と恒希さんを結ぶ愛の架け橋的存在なんじゃないかな?!元々あの湯飲み大好きなんだけど、さらに好きになっちゃったよ!恒希さん、やっぱり僕があの湯飲み大切にしてるって知ってて届けてくれたのかな?恒希さんって本当に性格良いよね!あの外見だけでも僕を魅了して止まないっていうのに、それ以上に性格格好いいとかもう完璧過ぎてどうしよう。あーでも恒希さんが来るって知ってたらもっと早く起きて、いやむしろ寝ずに待ってたのになぁ。恒希さん本当気配消すの上手くて、それがプロ忍らしくてまたいいんだけど、でも、」

コイツは何時になったら黙るんだ?

俺は伊作の惚気話を座学教室で授業終了後永遠と聞かされていた。かれこれ…一刻経ったのか。これを聞かされていると時間感覚が曖昧になる。今の俺の目は死んでいるに違いねぇ。
つか、湯飲みが愛の架け橋って何だよ。もっと何かあるだろ。湯飲みって夢も何もねぇじゃねぇか。

「伊作、そろそろ飯行かねぇか…?」
「うん、そうだね!」

俺は伊作と共に食堂に向かった。
とりあえず飯の間は多少落ち着くはずだ。俺、人の惚気聞くの好きじゃねぇんだよな。伊作だし、相手が八代さんだし、伊作への罪悪感もあるからそう邪険にはしねぇけどよ。
いやでも、伊作が八代さんに会ったときの蕩けきった顔でもう腹一杯だ。俺は何もしてねぇはずなのに胸焼けする。
…まぁ、それは伊作だけの話じゃねぇか。

「こんにちは、食満君!…と善法寺さん」
「ああ」
「…どうも」

食堂で俺だけを笑顔で出迎える望月さんと、伊作の水面下の攻防はもう今じゃいつもの光景と化した。毎度宜しく、望月さんは笑顔、伊作は無表情で視線を合わせ火花を散らしている。
八代さんに向ける視線や態度といい、あの人に助けられてることといい、どう見ても似た者同士なんだけどなぁ…同族嫌悪なのか何なのか。とにかく二人揃うと面倒臭ぇから、俺は伊作を押し退け望月さんの前に立つ。

「A定食二つ頼む。…伊作それでいいだろ?」
「…うん、まぁ」

そのやる気の無さを、普段八代さんの話をする時に少し振り分けて欲しいんだが。
溜め息を堪える。あー、最近幸せ逃げてる気がする。いっそ俺も好きな奴見つけてぇ。…三禁三禁煩く無くなっちまったしな。

「お待ちどうさまです、食満君!」
「ありがとよ」
「じゃあ早く行こっか留さん」

視線は常にお互いを捕らえてる癖に、口ではお互いの存在を完全無視する二人に、俺は気疲れしながらも俺は伊作と共に膳を運んだ。

「遅いですよー」
「別にお前と約束してねぇはずなんだがな」
「やぁ、綾部」
「こんにちは、食満先輩、善法寺先輩」

この綾部は最近、ふらりと俺達の前に現れては一緒に食事をとる時がある。どうやら望月さんのあの幻術のような術は解けているらしく、また伊作のように恒希さん恒希さんと煩ぇわけでもなく黙々と食うだけだから別にいいが。

「まだ他の四年と喧嘩してんのか?」
「…滝がうざいのが悪いんです。後、ミキもうざくてタカ丸さんもうざい」

言葉のわりに綾部はどこか寂しげに言うと、その外見に似合わず男らしく味噌汁を掻き込んだ。

「大体、滝が自分より誰かを美しいって言うの気持ち悪くないですか?」
「あー…」

伊作が言葉に詰まっている。確かに、いまいち否定できねぇよな。

「ところでお二人、明日の朝は部屋に居てくださいね」
「は?何でだよ、何かあんのか?」
「身の回りの整理もとい滝と早朝から死闘を繰り広げる予定なので、善法寺先輩を丁度運悪く巻き込む気がします。そしてその隣に居た食満先輩も貰い不運により、」
「よし伊作、明日は部屋に籠ろう」
「そうだね留さん。あ、でも綾部怪我はしないでね?」
「大丈夫です、滝の顔を一方的にぶん殴るだけです」

それのどこが大丈夫なんだ…?
伊作が保健室来させない程度にしてという、何か間違った指示を出しているのを横目に俺は小鉢の豆腐を箸で掬い、口に入れた。

それから綾部が平の顔を本当にぶん殴ったのは今日の夕方の事で、俺達に部屋に居ろと綾部が言った本当の意味に気づくのは次の日の早朝、仙蔵と綾部が部屋に訪ねて来てからだった。


一周年お礼フリリク。ちょこれ様へ贈呈



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