組頭さんは約束を護る男らしい。あらやだ惚れちゃう嘘伊作さんの方が好き。

俺は現在、意味のわからない事が起こりすぎて苛立っているのがよくわかる尊奈門君を引き連れた組頭さんに運ばれ、無事忍術学園に帰って来られた。
そんで、今たぶん保健室に向かってる…と思われる。一回伊作さんに連れて来てもらった曖昧な記憶だけど、組頭さんも伊作さんのとこ行こうとしてるんだしそうなはず。
案の定、ドアから入らず屋根裏から飛び出た組頭さんが降り立ったのは保健室だった。

「わぁ、ちょっとこなもんさん…!」

驚いたように声を上げる、ふわふわ茶髪に眼鏡の一年生。忍術学園で眼鏡かけてる子って珍しいよなぁ。やっぱ忍者たるもの視力も重要だから?だとしたらこの子、苦労しそうだな。
……ちょっとこなもん?

「うん、雑渡昆奈門。ついでに城の名前はタソガレドキ城ね」

あ、何だびっくりしたぁ。まさか組頭さんがそんな威厳も糞もねぇ名前なのかと…ざっとこんなもん…?あれ、何だろう聞き覚えが。

「ただいま、乱太郎。留守番ご苦労様…ってこなもんさん、また来てたんですか?」
「伊作君、君もか」

…伊作さんと、ざっとこんなもんという刺客?あ、やっぱ俺聞いたことあるわ。組頭さんの話、伊作さんから聞いたことある。

「伏木蔵君は居ないの?」
「ああ…雑渡さん、いつも狙ったように伏木蔵が当番の日に来てましたもんね。伏木蔵なら居ませんよ」
「そういえば、私も最近伏木蔵見てないです」

伏木蔵…あー、あれだ。前に伊作さんが話してた、最近見なくなったっていう保健委員の子。
その子を組頭さんが知ってるってことは、組頭さん今までにも結構保健室来てんのかな?…俺が今まであんまり会ってなくて、強くて、格好良くて…あれ、組頭さんもしや伊作さんの好きな奴の条件に当てはまってない?

「それって天女様のせい?」
「…さぁ、一概には何とも。僕も予定が詰まっちゃって、伏木蔵と話せてないんですよね」
「成る程ねぇ…まぁ、これでも食べて元気出して」
「わぁ!森松屋…!好きなんですよ、ありがとうございます!」
「組頭…この為に甘味処に行ってたんですか…」

あ、何か見れば見る程伊作さんが好きな人=組頭さんな気がしてきた。
いや、でも正直忍術学園の奴等より全然いいんだよなぁ…。問題なのは、組頭さんがあまりに忍として洗練されている事。それは逆を返せば、情に薄く忍務なら簡単に裏切られるかもしれない。

「それと、これ八代君から」
「え、恒希さん?!」

着物と俺(湯飲み)を差し出しながら言った組頭さんに、森松屋の包みをほどいていた伊作さんが驚いたように顔を上げた。
それからきょとんと、着物…次いで俺(湯飲み)を見る。

……なんかその、すみません。
いやね、確かに俺が伊作さんの立場ならまるで意味がわからない。むしろいつもの事とはいえ、着物持っていったはまだしも部屋に返せよと。…まぁ、何より俺(湯飲み)の存在が意味不明でしょうが。

「…ありがとうございます」

だがそんなひねくれた俺とは違い聖母マリア様並みにお優しい伊作さんは、我ながらアレな俺の行動に文句一つ言う事なく、天使な笑顔で俺と着物を組頭さんから受け取った。
あー、今日も伊作さんに癒された。そんな優しい気分な俺は優しい気持ちで伊作さんと組頭さんを見守り、乱太郎君への組頭さんの対応から意外と子どもに優しいし良い家庭が築けるんじゃないかという結論に至った。

あれ、俺何か無性に腹立つ事忘れてる気がするんだが、何だったっけ?



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -