ちょっと落ち着きました。どうも、湯飲みです。
なんか今思ってみれば、さっきのって全然話が進まなかったよね。俺がモッチーにマジで俺のこと好きなの?ねぇ好きなの?って確認しただけの時間だったよね。
…いや待て、考えさせろ。そんなはずはない。そんなまさか、モッチーの恋愛感情の確認して俺がただひたすら照れただけのはずが…ない、と信じてる。何かあったはずだ。えっとー…

そういえば、モッチーが何か言ってたな。天女ものとか。なんか今までも色々言ってた気がするけど…えっと、あれだ。トリップ?そうそう、トリップって…あれかな?英語のtripで合ってんのかな?直訳は旅だよなぁ。いや、でもわざわざ英語で言ったんなら別の意味が――

あれ?室町時代に英語ってそんなに伝わってたっけ?
…いや、アイドル学年とか言ってるし、伝わってんのかな。んー…あれ、でも確かモッチー、ヤンデレとかも言ってなかったか?ヤンデレって平成で生まれた略語だし、…何でそれをモッチーが知ってる?

「おい善法寺、いるか?」

言葉と同時に襖が開け放たれ、俺は一旦思考をそっちに集中させた。入ってきた人物を誰か認識した瞬間、殺気を向ける。…何度も言うが、本当に向けることはできない。気持ちの問題な。

「…留守か」

入ってきたのは潮江だった。潮江文次郎。いつしか伊作さんを殺そうとした一人。つまり俺の敵。
そいつが伊作さんに何の用だ。伊作さんがいない隙に部屋に何かする気なら、湯飲みに戻ったばっかりだが相手になるぞ。一人ぐらい今の俺にかかれば瞬殺だ。

「この部屋…」

その時、ゆっくりと部屋内を見回しながら言った潮江の表情に、俺は殺伐とした空気を引っ込めざるを得なかった。
なん、だ…?その顔。お前、天女に心酔してんだろ…?何でそんな――

「っ…!」

潮江は急に口元を押さえたと思ったら、部屋を瞬時に出ていった。
…具合悪そうだったな。本気で吐きそうに見えた。何より、この部屋には俺しかいないんだから演技なんてするはずないし。

今の光景は何だったんだ?時間にすれば数分だが…異常な空気だった。だいたい、あの潮江が――泣きそうな顔をするなんて、普通じゃない。おかしい。何かがおかしい。


そうだ、よく考えてみれば、俺はまだ何も知らない。
モッチーの幻術のことも、それにかかった奴等の心境も、モッチーが此処に来る前何処にいたのかも、何故食満だけ幻術がとけたのかも、

俺だけが何故、食器の神様からこんな特別な力をもらえたのかも。



ぱちん。

何かが弾ける音がした気がした。

んー…?俺、今何考えてたんだっけ?ああ、そうそう。潮江が変で…まぁ、考えても原因なんてわかりそうにないし今はこの件については置いとくか。



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