今日することは、モッチーに噂の真意を聞いて伊作さん達と一緒に今後の計画を立てること…なんだが、人間になる前に俺はあることに気づいて固まった。

え、俺モッチーになんて聞けばいいの?

『モッチーってさ、俺のこと好きなのか?』

うざっ。自意識過剰うざっ。それで空気が固まった時、俺は責任とれんぞ。しかもその後のモッチーとの関係も悪くなるだろう。

『最近のモッチーの噂に出てくる男って誰?』

んー…回りくどい。噂って?とか聞き返されたらタイムロスだし、今は別の噂が出回ってるかもだし、なんか言い方が俺モッチーのこと好きみたいだし。

『好きな人って、計画だよな?相手は俺で合ってる?』

…うん、無難だ。保身に走ってる気が強くするが、俺は普通とか一般とか日常とか無難とか、そんな言葉が好きだよ。

よし、三番の案で行こう。


俺はふらつきながら人間となり、慣れた動作で着物を羽織り紐で結ぶ。
伊作さんも食満もモッチーも前と同じ場所にいるようで、俺に気を遣ってくれたのかな、と嬉しくなりつつ走った。10秒もしないうちに、三人のところに到着する。

「善法寺君、モッチー、食満!」
「「恒希さん!」」
「…こんにちは」

かわいい笑顔で俺を迎えてくれた伊作さんとモッチーに、若干距離をとりながら食満も挨拶してくれた。何だろう、やっぱりこの前の扱いを根に持ってるのか?

「あーっと、これから何度も話すことになると思うから先に言っておくけど、俺時間ある時がないから、申し訳ないけど話は簡潔に要点を、もしくは紙に書いて渡してもらえるか?」
「やっぱり売れっ子は忙しいんですね…」
「え?ああ、まぁ…」

何の話かはわからないものの、伊作さんが納得しているらしいので話を合わせておく。

「そうだな、まず俺からモッチーに聞きたいことがある。先日、モッチーに好きな人ができたとかいう噂を聞いたんだが、それは計画で、相手は俺ってことで合ってるか?」
「計画かぁ…」
「モッチー?」
「え、ああ、合ってますよ!はい」

どこか曇った顔のモッチーと、モッチーを敵視するように見る伊作さん、疲れたような食満は気になったものの、とりあえずは話を進めよう。残り時間、30秒。

「計画って言うと、つまりどんな?」
「恒希さん程のプロ忍なら、だいたい天女ものにありがちなヤンデレからの攻撃も大丈夫かと思いまして。学園最弱の私はもちろん、私にもよく話す人と話さない人がいますから、そこから勘違いされて忍たまの一人が集中攻撃されたりしても困るので」
「成る程ねぇ…」

いつの間にやら俺がプロ忍であるという方向で話が進んでいるが、まぁモッチーの考え方は妥当だな。
でも話し方に違和感。天女ものって言い方、変じゃないか?まるでよく自分みたいに天女になる奴がいるみたいな…?

「うーん…とりあえず、問題解決するまでは好きな人俺ってことにしといて!じゃあごめん、またな!」
「あ、あの…っ!」

安定の10秒前行動で帰ろうとした時、伊作さんに呼び止められたため振り返る。

「僕のことも名前で呼んでもらえませんかっ?!」
「…」

勢い込んで言った伊作さんに、少なくとも俺の時は止まった。
え、いや、…そういえば、部屋で食満とそんな話してたね。
あの、嫌とかじゃないんですけど、そんな俺ごときがおこがましいって言いますか、調子乗ってると言いますか、あのとにかく、良くない。良くないですそれは。

「……じゃ、じゃあまた!伊作、君!」

年上な俺が伊作さんをさん付けというのは、やはり変に思われるだろうから、これが限界だった。
俺は走った。いつもより余計に遠回りしながら無心になるために走った。あああ、今絶対俺顔赤い!

部屋に滑り込んで着物を脱ぎ散らかし、テーブルの上に転がり込んだ俺は今、冷たいお茶を淹れられても熱いお茶になるだろう。



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