ヒソカと同じ部屋に居るのに寝られる程私の神経は図太く無かったようで、つまり私は試験官が来るまでの究極の暇潰し手段、寝るを封じられてしまったらしい。つらい。
しかもさっきの男に殺気とか敵意とまではいかないけど苛立った空気出したせいで、ヒソカの様子がおかしい。どうおかしいかは幼気な少女に言わせないで欲しい。ごめん嘘。正直十歳から数えてないから正式にはわかんないけど、私の年齢は二十歳とかその辺だと思う。

最終手段として、ヒソカにトランプを借りるというものがあるけど…やだなー。何か暇潰せる事ないかなー。と必死に思考を巡らせていたら、また一人新しく受験生がやって来た。ペースからしてこれは今日中には試験が始まるのでは?と自分が寝ていた時間さえ把握していない私は希望的観測をしておく。
ふと、新しくやって来た銀髪のまだ幼い少年と私の目が合った。…おや?
なんとなく見覚えが、ある?うーん?と考えていると、豆顔の人から番号札を受け取った少年が私と同じく何かを思案するような顔で早足に近寄って来た。目の前まで来た少年に、私は座ったまま少しだけ顔を上げる。

「アンタさ、オレと会った事ない?」
「私もそんな気がするんだけど、思い出せないんだよね」

じっと見ていると、彼の猫目が細められる。目を細めると言えば笑うの間接的表現に使うけど、実際はそれより目を凝らす時に細めると思う。偏見かもだけど、目だけ細めた笑顔ってなんとなく信用出来ないんだよね。
…ん?猫目?なんか最近猫目って…?この顔の作り…。

「あ、もしかして君ゾルディック?」
「そうだけど……あ、思い出した!家で会った兄貴の彼女!!」
「待って。とんでもない誤解を聞いた気がする」

恐ろしい。恐ろしいよその誤解は。思わず倒置法を使ってしまった。

「違ぇの?だって兄貴が家に誰か、しかも女なんて連れて来たの初めてだし、仲良さそうだったし、凄ぇ普通に兄貴の後ろ付いてってたし」
「ゾルディック様には大変ご贔屓にして頂いております何でも屋のブルーですドーゾヨシナニ」

だから即座にその誤解を解け、これは命令だ少年。
イルミ君を兄貴って呼んでるぐらいだからこの子はイルミ君の弟だよね。シルバさんとは仕事の話を二、三度した事あるし、ミルキ君とは一度だけプログラム談義をした事あるけど、この子と話した事は無かったな。

「君は名前何ていうの?」
「キルア。おねーさんは?ブルーって仕事ん時の名前だろ?兄貴は確か別の名前で呼んでた」
「うーん、じゃあ試験終わったら教えてあげる。それまではブルーで許してよ」

最初は不満そうな顔をしたキルア君だったけど、その方がやる気出るか!と素直に受け入れてくれた。素直な子供って可愛いなと思った。
さてキルア君や、ちょっと試験官が来るまで暇潰しに私と話しておくんなまし。



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