結局試験はなんと私以外の合格者が出ず、それに不満を唱えた人は私の三センチ横を通過するように吹き飛ばされる結果となっていた。

「…巻き込まれないようにしよ」

試験官vs受験者のような空気に、ヒソカか嬉々として殺気を出し試験官さんと戦おうとする気配を感じ、私はそっと試験官さんから少し距離を取った。それから背景と同化出来るよう徐々にオーラを消す絶を試みる。私は椅子。私は椅子。

そんな完全に傍観の態勢を取っていたら、いつの間にか場にはハンター協会の会長さんとやらが居た。慌ててよく話を聞けば二次試験はやり直しとなったらしい。いつの間に会長さん居たんだろう。
それにしても、二次試験やり直しなら合格した私の立ち位置これどうなるの?と思いながらも黙っていると、試験官のお姉さんがきょろきょろと辺りを見回し始めた。
うん?どうしたんだろう。

「ちょっと1番、何処行ったの?変ね、ついさっきまでは確かに此処に居たのに……ブラハ、いつ消えたかわかる…?」
「ううん、全然」

妙に申告な顔で私の目の前で交わされる会話。
そんなに私、椅子になりきれてましたか。目の前に居るのに、捜しても見つけられ無い程椅子に見えてますか。そうですか。
私はまたゆっくりと絶を解いて行った。

と思ったらその途中で女試験官さんに中華包丁を高速で首目掛けて投げられ、私が反射的に飛び退いていなければ首チョンパされていただろう九死に一生を体験させられた。

「な、何するんですか?!」

捜されていたから絶を解いたのに、何で殺されかけなければならないのか。
どう考えても私は悪くないし被害者なのに、女試験官さんはどうしてそうも私を当たり前のように警戒し謝る気配さえ見せてくれないのか。

「……今のがアンタの能力だって言うんなら、まだ救われるわ」

よくわからない事を言われた。私の絶が発に見える程にはそこそこ凄いって話かな?
もしかしたら私のコミュ力が低過ぎるせいで人と会話が噛み合わないのであって、他人から見ればよく理解出来るのかもしれない。その証拠のように、キルア君が女試験官さんの言葉に神妙な顔で頷いていた。

「それで、私の合格はどうなるんでしょうか?」

私はそんな恐怖の確率に気づかなかったふりをして、当初の目的を聞いた。

「…どうせ受かるだろうし、一度合格ってこっちも言ったからね。二次試験はアンタはもう合格よ。見学してなさい」
「わかりました」

私は安堵の息を吐いた。ハンター試験って何させられるかわからないから出来れば再試験は嫌だったんだよね。ラッキー。

軽やかな気分で移動の為に使うという飛行船に乗り込もうと歩き出す。
と、その時、ヒソカからの視線もイルミ君からの視線もキルア君からの視線も予想内として、他にもう一つ痛烈な程の視線を感じた。
振り返ると、会長さんがじっと私を見ていた。首を傾げる。
また警戒されてる…?そんな大した人間じゃないんだけどな、私。それともまた一方的な知り合いかな?

なんて、そんな頻繁に知らない知り合いが居てもらっても困るんだけどね。



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