やっと階段を抜けた先、二次の試験官が居ない事に嫌な予感がして、マラソン再開のお言葉に項垂れて、なんかごちゃごちゃその試験官は偽者だとか言い始めたオーラの一つも纏っていないサルが鬱陶しかった。

「死ねヒソカ」

だからといって、トランプのパフォーマンスは求めていない。切れ味抜群のトランプ投げられて拍手なんて誰がするものか。
硬を施した手でオーラつきトランプを叩き落として恨みを込めた言葉と共にヒソカを睨み上げた。それに嬉しそうな顔をするんだから、もう世の変態という変態は総じて息絶えて欲しい。
にしても、マゼンタさんといいヒソカといいどうしてこうも私に構うのか。私は二人程、そこまで特別に強くない。特殊でもない。しいて言うなら別の世界から来てしまったけど本当にそれだけで、異端な力を宿しているわけでもこの世界の未来を知っているわけでもない。そして誰にも私が別世界から来た事を言った事は無い。なんかそれ生き辛くなりそうだし。
…何だ?私は変人に好かれるフェロモンでも無意識に発してしまっているのか?香水は好きじゃないんだけど、一度消臭上書きの意を込めて買ってみるか?


「…ブルー、お前集中してんのかと思って声掛けなかったけど…もしかしてぼーっとしてるだけじゃねぇよな?」
「え?あ、もう第二試験会場到着だ。早いね、走り始めて十分ぐらい?」
「はぁ?」

キルア君の裏返った声に驚いて瞬きする。あれ、私そんな変な事言ったっけ?

「何?お前寝ながら走ってたの?変な生き物の襲撃かわしてたのも全部無意識?」
「変な生き物?…ああ、そういえば跳んだり避けたりしたような」

やばい、どんどんキルア君に呆れられていっている。年上の威厳が…。
だ、だって変な生き物の攻撃よりどう考えてもヒソカからの攻撃の方があらゆる意味で怖過ぎるし、その後だったからインパクトが無くて記憶の片隅にしか残らなかったんだよ!

「ブルーさ、前から思ってたけどなんか時間感覚おかしくねぇか?」
「…ちょ、ちょっとルーズなだけだよ」
「ちょっとじゃねぇだろ。病気かよ」

いっそ心配そうなお言葉に苦笑した。
病気か、そうかもしれない。でも検査を受けようとも思わない。この病気を、私は言及したくない。別に仕事関係は全部アラーム機能で管理してるし、日常生活においては特に問題無いはずだ。

「ところでゴン君は?」
「それも覚えてねぇのかよ…アイツお友達の声に逆走しやがったんだよ」
「ふーん、リタイアって事?」
「そうなるだろうな」

ふーん。
そうかな?なんとなく、そうはならない気がする。あの子、ハンター試験受かる気がする。
何でだろう?別に私は勘が鋭いわけでも、あの子の事詳しく知っているわけでも、今までの経験から判断したわけでも何でもない。

でも、絶対にそうなる。私はそれをいつかどこかで聞いた、気がする。不思議だ。



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