私は世界で一番美しい色を青と思い、青を想う。

青は空の色だ。
青は海の色だ。
青は宇宙の色だ。
青は生命の色だ。
青は奇跡の色だ。
青は幸せの色だ。

青は、私の色だ。


目を覚ますととても空虚だった。
確かにこの世界に来てから意味もなく焦燥を感じた事はあったけど…その焦燥さえ、薄い。これまでそれだけを夢見て来た筈なのに、そんな事はとてもどうでもいい事のように思えた。
自分が何処の誰かは覚えている。思い出せない事は何も無い。ぼんやりとした頭で顔を上げると、目の前に誰かが居た。
白髪に灰の目の、モノクロのみを宿したような少年。そのまだあどけない顔立ちは10歳程度だろうか。そんな笑顔の少年が、優しい目で私を見下ろしていた。こびりついたような笑顔だと思った。

「…誰?」
「ただの配達人だよ。はい、これ貴女にって」

渡された紙に一つ首を傾げ一先ず開いてみると、私の念能力の名前が書かれていた。
『青碧色の穴ぼこ牢獄<ブルースクリーン>』それだけ。…そう、これは私の青眼で見たものを青に閉じ込める念能力。けど。けれど。何故、それをこの見た事も無い少年が…?

顔を上げると、少年は既に居なかった。いつ居なくなったかは知らなかった。知ろうと思わなかった。
目からは何故か水が落ちた。

青以外の全てを無くしたような、そんな気がした。



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