「これで足りるか」
差し出された金の山に、私は笑む。
「ええ、これだけあれば」
よく此処まで自分の足で歩いて来て、意識を保つのもやっとだろうにこうもはきはき喋れるものだ。
少し感心しながら、お得意様の檜山の服を脱がして行く。
「今日はまた、派手にやったな。過去最高じゃないか?」
「ああ、今にも死にそうだ」
普通なら笑えない冗談だけど私は笑って、檜山の前に膝立ちし、元々引き締まった腹筋のあったただ赤でぐちゃぐちゃの腹部に手を充てる。
「愛世後退(タイムリカバリー)」
念を使えば、あっと言う間に消えて行く傷に、完全に消える前に傷口に手を突っ込む。
「ぅ、ぐ」
「すまんな、今日の傷は深い。私じゃこうしないと中の臓器まで治せないんだ」
最初から中を触るのは流石に痛過ぎるだろうとだいぶ治ってからにしたが、変わらなかっただろうか?
まぁどちらにせよ、傷は跡形も無く治った。一応確かめる為に腹筋を撫でる。それから笑みながら顔を上げた。
「痛かったなら、金はまけようか?」
「いい」
短く断った檜山に、じゃあ貰えるものは貰おうかと遠慮なく思ったところでドアが開いた。
なんだ、今日は客が多…
「きゃあぁあああああ?!!」
聴覚への攻撃かと思う程の悲鳴が小屋内を木霊した。