雷蔵君が家に居るのにも違和感を感じなくなってきた。
今日は僕が作ります、と何故か晩ご飯を作ってもらっている私は、まぁ今更無いだろうとは思うけど一応毒を入れようとするとか不審な動きをしないか義務的に気配を探りつつ、無くなってきた墨でも作ろうかと立ち上がった。
火を起こせたり飲み水を出せる念能力だったら少し此処での生活は便利だっただろうな、と此処より文明の進んでいた前の世界を思い出す。
ああ、一応外に出る事を雷蔵君に言っておこうか。

「ら、」

声を掛けようと振り返って、ふと、雷蔵君の後ろ姿に言葉を止めた。
何か包丁で切っているらしく、一定のリズムで小刻みに揺れる髪の毛は、ふわふわでもこもこで柔らかそうで、私はゆっくりと雷蔵君に近づき手を伸ばした。

もふっ。

「ぇ、うわぁあああああ?!って、近っ!え、な、何やってるん?!ええ?!」
「ご、ごめん…そんなに驚くと思わなかった」

一瞬固まり、まな板の上に包丁を落とすと次いで叫びながら振り返ったと思ったら、今度は逃げるように横に移動した雷蔵君に、罰が悪くなり謝る。
そんなに髪触られるの嫌だったんだろうか…。

「何したんですか…?」
「いや、つい髪質良さそうだなと思って触ったんだけど、髪触られるの嫌いだった?」
「いえ、その、そういうわけでは…」

口ごもり真っ赤な顔で視線を逸らした雷蔵君に、私はよく解らず首を傾げる。
わからないな。仲間以外の人の感情を考察しようなんて、思った事もないから。口に出されないと、わからない。

「嫌?」
「嫌じゃ、ないです」
「ふーん。私、言葉は言葉のまま受け取るから」

私は雷蔵君に近づいて行き、雷蔵君が此方を向いているために今度は正面から、雷蔵君の顔の横を通り抜けるように手を伸ばし、その髪に触れた。
目を見開いて固まったままの雷蔵君を少し気にしつつも、その手触りに頬を弛めた。


「…っわぁ!ぅわぁああああああ!!」

いきなり叫んだ雷蔵君に驚いていると、何故か腰を抜かした雷蔵君に、後ろが壁な事もあり危ないと思った私は一緒にその場に座り込み雷蔵君の頭を庇うように髪に伸ばしていた手をそのまま雷蔵君の後頭部に回し支えた。
脚を開き膝を立てた態勢で座り込んだ雷蔵君とその開いた脚の間に座った私の顔は近く、後頭部に回していた手を戻してから私は少し離れる。

「大丈夫?」
「だいじょうぶじゃ、ないです」

顔を両手で抑えたまま黙り込んでしまった雷蔵君に、心配しつつも怪我は無さそうなので、私はとりあえず雷蔵君のしていた料理の続きを始めた。


200000打お礼フリリク、森の木様

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