「「あ、愛…」」
ぽかんと揃って呟いた同じ顔に、シュールな光景だなと思いながら空を見る。赤くなって来たな。夕暮れになりかけの曖昧に青と赤が混じり合った空は好きだ。
「あ、そうだアヤメさんって結婚は…」
鉢屋君の質問のような言葉に、そういえば此処では婚礼時期がいやに早いのが常識だったと思い出し、愛なんて言うから相手が居ると思われたのかと分かれば笑いたくなった。
「してないよ」
そもそも、結婚とかそういう関係ではなかったけど…この短い言葉が私達らしい。
「もう遅いし、そろそろ帰った方がいいんじゃない?」
赤の面積が増した空に、子供二人で大丈夫なのかと眉を寄せる。
私ならあらゆる意味で問題ないけど、よっぽど近くに住んでいない限りは家も遠いだろう。
「やっば、絶対夕飯間に合わない…っ!」
叫んだ鉢屋君に、私は少し思うところがあったので一度家の中に入りまたすぐ二人の元に戻る。
「はい、大したものじゃないけど」
昼に作ったきな粉餅を急いで包んだ包みを二人に投げる。驚いた顔をした同じ顔に、なるべく優しく笑いかける。
「食べられる時には、食べた方がいい。怪しいと思うなら捨てて。もう行った方がいいよ」
本当なら念具作りを仕事としている友人にかつてもらったこのパンプスの念で送ってあげたい所だけど、いきなり瞬間移動なんて怖がらせるだろうし逆に迷惑だろう。
仕事関係以外で変な噂を広められても良い事は無いし。もう会う事も、
「ありがとうございます!…っあ、あの!また、来てもいいですか?!」
「…此処に?…まぁ、構わないけど」
こんな所の何を気に入ったのか知らないけど、来たければ勝手に来ればいいと了承すれば、不破君は満面の笑みを浮かべた。
「え、雷蔵…まさか、え?」
「あぁああああ!ほら、もう帰らなきゃ、ね!三郎!その話は後でね!よし帰るよ!」
「…あ、ああ」
「アヤメさん、さようなら!」
鉢屋君を引き摺るように走り去った不破君をぽかんと見送り、それから数秒後くすりと笑った。
「面白い子だ」
此処で会えて良かった。