「日達何処行くんだ?」
「腹痛いから保健室という言い訳をしながらサボり」
「お前、まだ授業始まって三日目だぞ…!」
言っている事はまじめに思えるが大笑いしている向日を教室に残し、俺は軽快な足取りで一回は行ってみたいサボりスポット屋上へと階段を上った。
一応言い訳させてもらうが、俺はいつもサボってるわけじゃないぞ!今日は消しゴム忘れたからやる気ないだけだし!
あーそれにしても、今日はそんなに日差しも強く無いし、風も微風だ。きっとこれからの時間は快適なものとなるだろう!
俺は屋上のドアを開け放ち、日差しのあまり当たらない場所を探した。すぐに見つかった、おそらく給水棟の影となっている場所を覗き込んだ…ら、先客が居た。
「…羊?」
でかい羊のぬいぐるみを枕に、金髪の男がうつ伏せに眠っていた。
「…」
顔は見えないが、男の髪も金髪でふわふわの癖っ毛な事から羊のぬいぐるみと同化している。コイツ自身も羊のようだ。
「……」
コイツ、ツッコミ待ちだろうか。
俺は無意味に辺りを見回し、誰も居ない事を確かめた。それからもう一度羊男を見る。
金髪だし、堂々とサボりだし、怖い奴かもしんねぇな。羊だけど。でも実は顔は羊どころか狼かもしんねぇし。
俺は一人納得して二度頷き、羊から少し離れた、だけど日陰となっている場所に腰を下ろした。
「あ」
向日に授業頑張れという嫌がらせメールでも送ろうと思ったところで、アドレス交換がまだだったと気づいた。チッ…後で赤外線やらなきゃな。
向日とは何だかんだ気が合う。テニプリキャラではあるけど仲良くなって良かった、と思えるぐらいには。
ふと羊を見ると何かを思い出しそうになったが、何も思い出せなかった。
あー、ジンギスカン食いたくなってきた。