「朔人」

幼馴染みの進に呼ばれ、俺は振り返った。眠さに耐えつつホームルームも終えた事だし、俺は早く帰ってゲームしたいんだが。

「一緒にテニス部入ろうぜ!」
「ヤダってば。一人で入れ」

大抵の事は、じゃあいいや、で流す進はこの件に関してだけはしぶとかった。何度目かの誘いに顔をしかめながら即答で断り、席を立とうと椅子を引こうとして…椅子を押さえられ立てなかった。

「この…離せっ!」
「お前、テニス超上手ぇじゃん…!」
「…いや、下手ではねぇし上手い方ではあるだろうけどさー」

一緒に初めてラケットを握り何度も俺とテニスをしてきた進にはわかんねぇだろうが、俺はあの時既に、初めてじゃなかった。
スタートが違うから同い年の奴等の数倍上手い。それだけ。才能とか別に無いし。
でもそれを進に言うわけにもいかねぇから、俺はちょっと他より才能のある奴を演じている。ついでに進には内緒だがテニスは失礼と思いつつ多少手を抜いている。

「めんどい。中学では帰宅部一筋って決めてんだよ」
「お前の青春はそれでいいのか!?」

青春とか二度目だし、俺は前の青春で既にテニス部で汗を流し練習に明け暮れ、笑い、涙した。
部活動での青春は謳歌したと言っても過言じゃないはずだ。

「悪いが俺は桃色の青春を送る」

俺は机を前に動かす事で脱出し、そのまま教室から逃げ出した。ゲームが俺を呼んでいる…!
前もろくに見ずに走っていると、誰かに肩がぶつかった。

「すみませーん!」
「ああ、気を付けなさい」

微かに香るさっぱりした薔薇の香水の匂いに、俺は足を止め振り返った。流石は氷帝。教師も紳士淑女が標準装備…か…?

「榊、先生?」

だよな?後ろ姿だけどあれはそう確かに…スマートな所作だなおい。やっぱ家は金持ち?榊コンポレーションとか普通にありそうだもんな。
俺は謎の感動を覚えつつ、また歩き出した。今日はゲーム徹夜だぜ!

…ん?俺のテニプリ初遭遇キャラ、榊先生?

              


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