元の3歳児の姿で歩くのが久しぶりで、この歩幅の小ささにはイライラせざるを得なかった。
ので、ご飯前にも拘らず甘栗甘に寄ってしまった私は悪くない。糖分はイライラを抑制します!

「あーもちもち。もーもちもち。荒んだ心がもちもち」

お店の前の椅子に座って、みたらし団子もちもちしてれば癒される私も大概お手軽である。
そうやってもちもちもっちもちしていると、目の前を黒猫が横切った。

「お姉さんも、食べないですか?」

だから無邪気に誘ってみた。
妹と真逆と言っていい程の冷えた視線と目が合う。真っ黒な目は未だしも、その長い桃色の髪は最近初めて会った妹と同じ色と髪質だ。

しばらく黙って無表情で私をジロジロ見ていた黒猫さんは、鼻を鳴らしぷいと顔を背けると何処かへ行ってしまった。正しく黒猫。
元から子供どころか年下も嫌いな子だから仕方ないかなとまた一口団子を頬張る。そもそもあの子は甘いものも苦手だったかもしれない。

「あの子の好きなものって、なんだったかなー…」

からいのは好きだったよね。後、うーん…私というか陽様?それから本人は否定するだろうけど、、

早く直さなきゃ。私以外の全てを元通りの幸せに直して、パズルを完成させなきゃ。
その為には誰一人欠かしちゃいけない。その為に私は戻って来た。その為以外の理由はない。誰が、どれだけ望んでいると知っていても。

視界に射した影に、不思議そうな顔を作り見上げた。視界の先にあった太陽に目が眩み、少し目を細める。

「晩飯前に何買い食いしてんだよお前は」
「食べ盛りなものでっ!」
「じゃあ母ちゃんに同じ言い訳するんだな」
「いやあぁあああ!待ってお兄ちゃん!お母さんにだけは!お母さんにだけはこの事は…っ!」

我が家のヒエラルキー最上位なお母さんを引き合いに出されて、私はおいおいと泣き真似しながらお兄ちゃんに縋り付いた。お母さんに楯突く方がバカなのだ。

「それはそうとお兄ちゃん、もう下忍のお仕事は終わったの?」
「おつかいレベルだからな。すぐ終わる」
「ふーん、イノちゃんとチョウジ君は?元気?」
「は?この前会ったばっかだろ」
「えー、すぐ怪我したりするのが忍者でしょー?」

ケラケラと誤魔化しも込めて笑いながら言えば、お兄ちゃんは何を想像したのか急に表情に陰を落とした。

「お前さ、…忍者になんのか?何か、お前はもっと別の、さ。例えばお前の好きな甘栗甘で働きたいとか…」

お兄ちゃんは、そんなにアキに死んで欲しくないんですか。そうですか。

「アキはニートになるんだよ?言ったでしょ?」
「母ちゃんが許さねぇよバカ」
「えー、アキはアキにベタ惚れな金持ちイケメンと結婚して、家事もしないで毎日楽しい事だけしてぐうたら生きるんだよ!」
「…そ、そうか」

丸っとお兄ちゃんの希望を飲んだというのに微妙に引かれた。解せぬ。

「もし高物件が無かったら、お兄ちゃんが養ってね!」

ぱちんと可愛らしくウインクしてハートを飛ばせば、お兄ちゃんはデコピンしてきた。ひどい!最近は幼児への虐待が流行なのですか?!

「…働け」

そんな事言って、養ってくれる気なくせに!このシスコンめ!

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