ご飯を食べたら話、と予め言っていたせいかナルト君は食事中無言で落ち着きがなかった。早く食べ終わりたくもないらしく、なるべくよく噛んで味わうように食べている。もしかしたら久しぶりの私の作ったご飯を味わいたいってのもあるかもだけど。
当然私の方が先に食べ終わり、かと言って人の食事中に荒れた部屋の掃除をするのもなぁ、と洗い物の前に植木鉢に向かった。土を触ると湿っている。黄色の花はナルト君があんな惨状だったにも拘らず、今日も水をちゃんと貰えていたらしい。

「この花、どうしたの?」
「…陽さん、が、以前買っているのを見て、それで、」
「ふーん」

花をじっと見ながら返事のような言葉を返す。
以前ってどれだけ昔の話だろう。まぁ普通に考えてナルト君の部屋でこれを私が見た事無い時点で、ナルト君の家に最後に来た日から死ぬまでの間に決まってるけど。

「花の名前知ってる?」
「はい。キンセンカ、ですよね?」
「そう、でも他にも沢山名前がある花なの。長春花、ポットマリーゴールド、時知らず、カレンデュラ」
「…時知らず」

一つに反応したナルト君に振り返って苦笑すれば、彼はもうご飯を食べ終わっていた。

「長春花も時知らずもカレンデュラも、全部同じような意味だよ。これね、花が咲いてる期間が凄く永いの。カレンデュラはカレンダーからつけられた名前で、何ヶ月経っても咲いてるからって」
「詳しいんですね」
「これ、太陽の花だから」

食器をキッチンまで運んでくれていたナルト君の動きが止まる。

「太陽、ってヒマワリじゃないんですか…?」
「そっちが有名だよねー。目立つし華やかだし夏の風物詩」

でも、カレンデュラも太陽の花だった。ヒマワリより目立たずでしゃばらないその小さな花が、私は好きだ。

「ヒマワリは太陽に向かって咲くでしょ?カレンデュラは、太陽が出ている間だけ咲くの」

その慎ましさが好きだ。太陽にアピールもせず、ただ小さく美しく咲く姿が好きだ。
私はカレンデュラになりたい。咲かないカレンデュラに。

「…陽さん?」
「ああ、ごめん。ちょっと自分の世界だった。じゃあ洗い物は後にして、話そっか」

途端にやっと和んだ空気を強張らせ棒立ちになったナルト君に、笑顔で近づきその手を取った。

「大丈夫、私はナルト君を嫌いになんてならない。知ってるでしょ?」
「っ…は、い」

悲しい顔をして涙を流したナルト君。泣けなかった彼が泣けるようになって、声を出せなかった彼が嗚咽を溢して、そんな私の過去の功績。私がやった事は間違いばかりではなかったと思わせてくれる姿に、私の心はそっと救われた。

「あの日はね、イタチ君と会って来たんだよ。それで私が救えなかったからって自己嫌悪中だったの。ナルト君は私の大切な人の一人だからさ、八つ当たりとかしたくなくて。ごめんね?」

嘘ではない。でも本当とは言えない話だった。それでもナルト君は疑いを端から抱かず信じる。

「陽さんが無事なのなら何でもいいです」

ああ、盲目だ。

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