やっと手を伸ばすのに躊躇が無くなったのも束の間、そんな無償の信頼を抱いていた人物が死亡。そんで奇跡の再会後、100%相手の為に差し出した手を拒否される。

…ナルト君の話である。
そう、ナルト君が大好きな私としては三日前のアレはさすがにやっちゃったなーとか思ってるわけだ。前世で初めて会った時のナルト君は、この世の全てを信じていなかった。私が私だったから差し出した手を握ってくれたけど、それからもずっと恐々と手を伸ばす子だった。私はその全てを笑顔で握り返す事で彼に信じる事を教えた。
振り払ってしまったのは初めてだった。

後に白君に聞いた話、あの時私があえて見る事をしなかったナルト君は泣いていたという。声も出さず、ただ。

そんな訳で、建物の外からでも感じる負のオーラ。ただいま一般人風に変化して、ナルト君の住んでるマンションの前です!

「ピンポーン」

口で言った。だって表向きでも九尾の器って事を里中に知られてるナルト君の家に正面から訪ねるなんて、それだけで怪しんでくださいだ。だから窓からこっそり返事も聞かずに不法侵入で入って、ピンポン発言は空気を和ませる為の私の気遣い!

「…陽さん?」
「あ、変化しててもわかった?じゃーん!見て見て、約束通りご飯作りにしかも食材も買って来たんだよ!部屋の惨状見る限り大正解だったね!」

呆然と私を見るナルト君は、私に助けを断られた日から何も食べていなかったらしく少し痩せていた。部屋の家具もいくつか壊れている。ぐちゃぐちゃな室内で、綺麗に保たれている鉢植えと黄色の花に気付いていっそ異様だと思った。うん、でもキッチン付近は無事だし、テーブルもちょっと欠けてるけど使えなくはないし、椅子も二脚分は丁度使えそうだから、一先ずご飯だけ作ろうかな!
キッチンまでの道を歩く途中に居るナルト君の頭を撫でようと買い物袋を持っていない方の手を伸ばせば、ナルト君は肩を僅かに跳ねらせ緊張したように私を見た。私はそれを無視してナルト君の頭をくしゃくしゃと撫で、キッチンへ向かった。

「…陽、さん」
「難しい話はご飯の後よー。まだ成長期なんだから、動いた分は食べないとダメじゃない。ただでさえナルト君は暗部で一班で総隊長っていう人の云万倍も動くんだから」

何か言いたげでありながら言う事を恐れているみたいなナルト君は、束の間の先延ばしに安堵したようで小さく息を吐いた音が聞こえた。
かと言って彼にとってそもそも悪い話をしに来たんじゃない私はあんまり話まで長引かせても可哀想だと、早めに出来るメニューをちゃっちゃと仕上げて行く。
無洗米のお米を早炊きで炊き始めて、鶏肉とえのきのソテー、チーズと卵のスクランブルエッグ、キャベツの千切り、豆腐とネギの味噌汁。全部時間が掛からないものをとはいえ、成長盛りの子供に栄養バランス考えないもの食べさせられないからね。

「あ、ナル…」

掛けようとした声を止めて、笑った。
いつしか当たり前だった光景。いつしか当たり前だった行動。
言われる前からナルト君はお箸もお茶も二人分用意して、炊飯器の前でしゃもじを手にお米の炊き上がりを待っていた。まるで過ぎた時間なんて無かったように錯覚しかけるその、日常。
それに完全に戻らないのは、ただの私のわがままだ。エゴだ。

誰が私を太陽だと言っても、私は太陽ではない。なれない。

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