私が選べる道は三つあった。
一つは今までと全く変わらず、これ以上は誰にもバラさないように緋兎として暗部を頑張る。惰性に。怠惰に。
もちろんそんなものは一秒未満で却下だ。

一つは頭を使う道。思考を思考して思考する。常に周りに目を配り、全ての可能性危険性を計算。網を張る。世界の全てをこの手で転がす。
出来なくもないかもしれない。でも、不確定要素が多かった。里の外の事は計算し切れない事が多いだろうし、私は今までそんなのした事ないから…まぁある程度は余裕に熟せるだろうけど、自分の限界値を知らない。出来ない範囲があった時、それが出来ないと把握出来るかさえ曖昧な分野だ。
それに、木の葉で情報を集めるんなら海と宵の網を掻い潜って自分の網を張らなくちゃならない。そこまで行くとちょっと無理かもしんない。能力はあっても経験の無い初心者な私が、ベテランなプロ様に勝てるとは思えない。
つまりこれも没。

最後の一つ。結局私が選ぶのは単純なルート。
今よりずっと強くなる事。

元々私は、天才だった。前世、アカデミーに通った事すら無い。
違法店だったから生理も来てない歳からお店に出てたけど、裏を返せばお客さんと話す機会も多かった。遊廓に来た忍のお客さんを口車に乗せてお遊びレベルのチャクラや印を教えてもらって、難しいですねなんて笑いながら頭ではその全てを克明に記憶し、人知れずものにした。自由時間は身体を鍛えた。私の成長速度は、ほぼ自己流にも拘らずきっと歴代忍の誰より早かっただろう。そう自分で思わざるを得ない程私は天才過ぎた。
それから私は見事店を雷遁の電熱で燃やし、自由を手にする。その後死ぬまでは一度として、鍛錬をした事は無かった。

もっと強くなろう。
前世の死に際のあんな軍勢、鼻で笑える程に強く。数を無意味にする程の圧倒的な格の違い。今度は自分の才に、現状の最強に胡座をかかない。天才の本気、見せてやる。
そうして、全部邪魔なもの蹴散らせて笑顔で今度こそイタチ君に会いに行く。迎えに行く。



何はともあれ、私の修行の前に残しちゃったいっぱいの面倒事片付けなきゃですけどね。

「お兄ちゃん?何考えてるの、むっずかしー顔!シワ寄せるとすぐシワシワおじいさんになっちゃうよー?」

縁側に座って隣に置いてるせっかくお母さんが淹れてくれたお茶を一口も飲まずにすっかり冷まさせ、眉間にシワを寄せ何かを考え込んでいたお兄ちゃんの横に座り、その顔を覗き込んでにっこり笑う。お兄ちゃんは私と目が合うと難しい顔をやめてため息を吐いた。
お兄ちゃんの考え事は予想がついてる。波の国での緋兎の話をカカシ君達から聞いたんだろう。それと昨日のボロボロな緋兎の事。緋兎の連れてた暗部達が誰かは波の国の件から予想出来るだろうけど、内容までは知らなくても交わされた緋兎とナルト君の会話も悩みの一つか。

「お前は気楽でいいな」
「えー、それしっつれーだよお兄ちゃん!アキにもお悩みの一つや二つあるんだよっ!」
「おう、なら言ってみろよ」
「アキ、アカデミーのクラスでモテモテのモテ子ちゃんで次の色の授業がね、授業にならなさそうなの。先生も困ってるんだよ!」
「マジか」

本当に驚いた様子なお兄ちゃんに、ぷーっと頬を膨らませる。これは口から出任せではなく本当の話なんですよもうっ!奈良の遺伝子は悪くないんだから、お兄ちゃんだってもうちょっと普段からやる気出したらモテモテになるよ?…願い下げだろうけど。

「次の色の授業って何だよ」
「くじ引きで男の子に手作りあんころ餅をどうにかして食べさせるーってやつでね、男の子には先生から毒入りかもって情報が流されてんの」
「は?ならモテるとか関係ねぇだろ」
「ところがどっこい!情報が流れた直後、男の子達から毒入りでもいいからアキちゃんの俺にくださいコールがクラスほぼ全員!くじ引きなのに!つまりはアキだけ難易度だだ下がりなのですっ!!」
「あー…」

アカデミーん時のサスケみてぇな感じか。との言葉に私は驚く。サスケ君もそんなだったのか。それこそマジか。

「ねっ、アキにもお悩みはあるんですー。お兄ちゃんのお悩みなんてちっちゃいちっちゃい!」
「調子乗んなよ」

叩く真似をして来たお兄ちゃんに、私はすかさず立ち上がりきゃーっ!と笑いながら逃げる。
そんなに緋兎の事警戒しなくても、私は絶対に敵にはならないのになぁ。考えるだけ無駄な労力ってもんだよ!

お兄ちゃんから見えなくなるまで走って、止まって、息が乱れてもいないのに深呼吸した。
まぁお兄ちゃんが考えるのは癖みたいなもんだからいいとして、今一番すべきはナルト君に会いに行く事かなー…。波の国でご飯作ってあげるって約束したし!
きっと私が追い返した事は、初めてその手を振り払った事は、ナルト君を果てしなく傷つけてしまっただろうし。

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