「再不斬さん、アキさん困ってましたよ?」
「…テメェはあいつを見て何も思わねぇのか」

寝転がったまま、八つ当たりに白を睨めば苦笑された。そうだ、お前だって気づいていねぇわけがねぇ。

「アキさんは優し過ぎて生き辛そうですよね」
「馬鹿なだけだろ。馬鹿過ぎる善人だ」

いっそ疑問だな。あの得体の知れねぇ俺の上司様とやらは、何故ああも、善人なのか。
それは俺が唯一と言っていい程アキの嫌いで気持ち悪ぃと思う部分だった。同時に、そうじゃねぇアキは今日初めて会ったってのに、既に微塵も想像出来なかったが。

「あのガキ、俺達相手にも保険かけやがったぞ」
「失礼な話ですよね」

まったくだと大きく舌打ちした。運命を握ってるなんて言っておきながら、それが無意識でもあいつは俺達に護られるどころか護ろうとしていた。
だから俺達を殺すより自分が瀕死になる方がましだとほざける。しかもそれをあくまで自分の為だと言い訳してるみてぇな顔で。

俺の見立てじゃ、アイツは自分が善人と見られるのは嫌で、自分で自分をそう見る事さえ嫌悪してやがる。
その癖、自分を善人と偽る事は積極的に貼り付いた笑みでやってのける。

ああも、ああな、アキが、自分が善人であると何がどう不利益で不都合で決してあってはならねぇと思ってるのかなんて、俺にも白にも簡単にわかった。

「次からは我慢してくださいね」
「…ああ」

仕方ねぇから、俺も白も、私って酷い最低な悪女ねとでも言いたげに愉しそうにわらうアキにただこれから肯定して行くんだろう。
俺も白も、あの女に一生捧げたからだ。
隣が辛気臭ぇのは勘弁だぜ。テメェは一生自分騙して笑ってろ。

護るのは仕方ねぇから俺達がやってやる。

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