これはイチャパラの最新刊を買いに本屋に行った時の出来事だ。

俺が本屋に行くと、そこには身丈に合わない本を読んでいる幼児が居た。絵本のコーナーは遠いはずだし…ナニよりそこ、成人向けコーナーなんだケド。
俺はその姿を見るまで幼児の存在に気づかなかったことに首を傾げつつ、とりあえず幼児の前で買う気は無いもののイチャパラの最新刊に近づいた。
すると、見えた幼児が読んでいる本の中身。

…俺は直ぐ様幼児から本を取り上げ――ようとしたら、幼児は俺が取り上げるより前に本を両手で胸の前に抱き寄せさっと後退した。
あれ?俺、今結構本気の動きしたよネ?

「な、なんですか!フシンシャはツウホウですよ!」
「いや違うから!違うからね!お嬢ちゃんが持ってる本は子どもは読んじゃダメだから取り上げようとしただけだからね!」
「へ?」

酷い嫌疑をかけられそうになったから慌てて否定すれば、幼児はきょとんとして俺を見返した。
それにより、俺は幼児の目が髪と同じ漆黒じゃなくほんの微かに青を垂らしたような深海のそれより暗い藍色だと気づいた。…別にロリコン趣味は無いけど、顔立ちはもちろん髄一目が綺麗な子だ。

「おにーさん!これは、ジュンアイショウセツですよ!」
「…うん、そうなんだけどそれを君が知ってることが問題かな?ほら、ここにR18ってあるでしょ?これは18歳より下の歳の子は読んじゃダメってことなの」
「へぇ!おべんきょーになります!」

イチャパラ片手にきらきらとした目で俺を見る幼児…あ、これ知り合いに見られたら本当にあらぬ疑いかけられそう。

「バクゼンとしたフアンてなんですかおにーさん」

嫌な想像に辺りの気配を探っていると、幼児がイチャパラを開いてあるページの一文を聞いてきた。…お兄さん、18禁用語聞かれたらどうしようかと思ったヨ。
俺は、ふりがながあるわけでもないのに、意味は解らなくともこの年齢の子どもが"漠然とした不安"を読めた違和感には気づかず、幼児にでも解りやすい表現を探した。

「よくわかんないけどもやもやすることカナー」
「じゃあ、アキはバクゼンとしたフアンです!」
「ふーん、そうなの」

すっきりしたような顔してるけど、それ結局もやもやしたままじゃないのカナ?と思いつつも、時間を見ればもう任務が始まりそうだった。
…暗部の任務だから、遅れられないんだよネー。今の総隊長のあの冷徹なお仕置きが怖いのも勿論だけど――何より、あの人につけられた習慣。もう彼女は居ないのに。

「おにーさん?」
「ん、ああ、じゃあお兄さんはもう行くから。じゃあね」

俺は幼児には見えないだろう速さでイチャパラを手に取り、急いでレジに向かった。
…俺、子ども好きじゃないのに何で任務前に構ったりしたんだろ。

「はい、またね!」

ああ…そっか、何処か…そう雰囲気が、あの人に似ていたからだ。

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