「おい、着いたぞ」
「わかってますー」
「降りろ」
「うー、もーちょいワンモアー」

再不斬さんが私の脚を支える手を離したせいで、私は今自力で再不斬さんの首にぶら下がっている態勢だ。しかし変化している私の腕力は弱くはないので別に辛くない。後何時間でもこの態勢を貫いてくれよう。

「陽さん、どうしたんですか?」
「うーブロークンハートなうー」
「あのうちはイタチに拒絶されたのがそんなにショックでしたか?」
「…」

それは…無いとは言えない。そりゃ、イタチ君に拒絶された事なんて今まで嘘でも無かったから。それ程にイタチ君は私を愛していたから。
でも、それをそんな事と言えるぐらいには、私はもっとずっと果てしなくショックを受けた。

「イタチ君はね、優しい子なの。優しい、やっさしい、子…なんですよ」
「はぁ。あの物言いからはそうは思いませんでしたけど」
「…私は、私がまだ居ればなんとか出来たんじゃないかって思ってたの。当たり前に、そう思ってた。そして、その可能性を奪った私が申し訳なくて申し訳なくて仕方なかった」

イタチ君が私を拒絶するその瞬間まで私はそれに疑問さえも抱かずに。
…そして、イタチ君が私を拒絶する…拒絶出来る、その意味。それに私はショックを受けたんだ。

「全部、私の勘違い。傲慢。イタチ君は最初から…私が生きていたって、相談さえしないつもりだったんだ。よく考えればわかるのに。初めて会った頃には遅かった。その通りだった」

だって彼は一度として、自分からそんな話をしなかった。私が死ぬ前に何度だって助けを求める瞬間はあったはずなのに、一度として。一度として。

「イタチ君が、最初に里とうちはの争いやクーデターを知ったのとか、二重スパイとか、始めたのはいつだったんだろう。私、知らないんだー…いざとなったら私が護るからいいやって、今考えればきっとそんな軽い話じゃなかったのに」

イタチ君は、最初から自分を護って欲しかったんじゃないんだから。里、一族、そして何よりサスケ君。それを護る為に喜んで犠牲になるような、そんな人なんだから。

「火影様に偉そうな事言ったけど、私がその場に居たとして、知ろうともしてなかった私に何が出来たんだろう。うちはシスイの死だって、あの頃私はイタチ君の親友が死んだ以上の意味を考えもしなかったくせに」

これは罪を軽くする為に話しているんじゃない。言葉にして、強く確かに言い訳なんてもう出来ない程、罪を自覚する為だ。

「私が生きてたって、イタチ君にとっての私は里の護るべき人の一人に過ぎなくて、何も話さず、全部一人で背負って、居なくなったんだ」

例えばもし、私が強くて優しい彼にとって頼れる存在…それだけだったら違ったかもしれない。でも私は、あまりにも彼にとって失いたくない存在だった。そう思わせた。下手すればサスケ君以上に。そんな、あってはいけない事。

「あの頃私は何も考えてなかった。ただ、暖かい日常を愛していて、そしてその日常をいつか壊さなきゃいけない事を惜しんでいて、それ以外何も考えてなかった。そのツケだね」

ダメと知ってて、ズルと知ってて、それでも心地よかったの。それだけに浸っていたかったの。あの世界は、私に優し過ぎた。私が、そうしたから。

「アキさんは、全部自分一人でやろうとするからいけないんだと思いますよ。それじゃ、出来ない事が多いのは当たり前です」
「うん、それでも。私は一人で護りたかったの。腕の中に収まるだけの、たった数人なのに、どうして取りこぼすんだろう」

どうしてなんてもう知っていたけど言った。それは戒めに近かった。

「まだ誰も死んでないなら、また拾えばいいですよ」
「…拾うしかしないつもりなのに拾うのは、無責任じゃないかな?」
「拾われた後どうするかはテメェに決めさせろ。俺も白も好きでやってんだ」

その言葉は言わせた。自分が弱っているのを逆手にとった。穢い。

「…そうだね、三人寄れば文殊の知恵!三本の矢!」
「二人は伴侶三人は仲間割れとも言いますよね」
「やめて!せっかくポジティブに戻った私にすかさず不吉なフラグ立てるのやめて!」

ああでも今度は大丈夫。だってあの頃私は知らずに罪を犯したけど、今度は知ってる。知った上で必要な罪を重ねている。
それでも私は、私のかわいい部下達の――幸せの為なら何でも出来る。何だって。

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