火影様との話し合いは、最初の火影様の苦い顔と神妙な空気張り詰めた火影室とは裏腹に、余りにも呆気なく二人の木の葉入り及び私の部下扱いを許されたのでカットさせてもらう。
私が目的から言って決して火影様の敵とはならず、一度失敗している火影様としては断り辛かったのに付け込んだ…なんて黒い裏話は内緒だ。
ついでに白君と再不斬さんの木の葉での生活の世話等を口実に、五日間のお休みももぎ取りました!やったね!

所変わって、現在私が何かあった時の逃げ道、手段の一つとして使えるかもと用意しておいたアパート。まさかこんなに早く使う機会が来るとは思わなかったです。
私と白君が机越しに向かい合って正座して、白君の後ろから私を目つきの悪い目で見る再不斬さんの図。お見合いで相手方の保護者に威嚇されている気分だ。それじゃあ纏まる話も纏まりませんよ、再不斬さん!
と、冗談はここまでにして。

「此処、好きに使っていいから。火影様に話通してあるとはいえ大っぴらに外歩くのはちょっとまずいから、なるべくは家に居てね。そこの引き出しに入れてる現ナマ達は好きに使っていいし、ご飯とかも私が居ない時は自分達でお願い。…さて、質問は?」
「…そう、ですね。色々とあり過ぎて何から聞いていいか…」

ここでの質問、木の葉までの道中では浮かばず、つまりは火影様と話す私を見て浮かんだ質問という事になるのだけど。
そうかそうか。そんなに火影様と話す私は不思議塗れだったか。

「テメェは火影より偉ぇのか?」

基本的に情報を集めるのは白君の役目のようだけど、白君に集中してると再不斬さんがたまに横から鋭い質問して来るからまぁ、なんというか…いいコンビだ。

「まさか。今なんていっそ、私の権力は無いに等しいです。火影様が私の”わがまま”を聞くのは、ただの”ご厚意”に過ぎませんよ」

それが計算尽くで当たり前に塗り固められたものだとしても、それは私も火影様も理解し納得した関係だから語られる言葉が綺麗でも汚くても結果は変わらない。それなら綺麗に行きましょう。
再不斬さんは納得したのかしてないのか、馬鹿にするように鼻を鳴らすだけで会話を終わらせ壁に寄り掛かって静観の姿勢に戻った。いや、納得してないんだろう。再不斬さんが汚い方の言葉で語られたかったなんて理解していた。それでも私は綺麗を選んだけど。

「話を聞く限り、火影様は陽さんが先代の暗部総隊長である事と緋兎さんである事は既知のようでしたが、奈良陽さんである事は?」
「知らない知らない!奈良陽に関しては木の葉の皆、かわいいアキちゃんだとしか思ってないよ」

数年は本当にただの子どもだったんだから、周りが気づかないのも無理はない。

「では、先代の暗部総隊長と緋兎さんが同一人物である事を知るのは火影様だけですか?」
「ううん、私のミスと火影様の策略で今の暗部総隊長は知ってる。でも彼も黙っていてくれる人だからそれ以上は…少なくとも今のところ、広がらないかな」

今後の事までは自信持って断定できないのが何とも歯がゆく辛い話だ。広めたくない気持ちなら人一倍なんだけどねぇ。

「…暗部総隊長も手駒って訳か」
「失礼だな。私は彼を手駒扱いする気は無いの。それに伴うリスクも高過ぎるしねぇ。だから、君達が欲しかったわけよ」

私は悪どく笑んだ。

「とんでもねぇ奴に付いて来ちゃったなって、思ってる?」
「そうですね…けど、誘われた時よりもっと貴女に興味が湧きましたね」
「俺の上司になるなんて抜かすガキが、ただの木の葉の下っ端ってよりは面白ぇ」

そんな二人の反応に、私は気づかれないようにほっと胸を撫で下ろした。そう、その程度でいいんだ。ただ拒絶されなければ。
もし拒絶されたら、秘密を教えた以上始末しなきゃいけなくなるから。

「なら良かった!これからの私の命運って、結構君達に握られるんだよね!私と君達は言わば運命共同体!私のハッピーエンドの為に尽力してくれたまえ!!」

そんな本音を呑み込んで、私は最高に明るく偉そうに宣ってやった。

「さて、今日の質問タイムはおしまい!私、家に帰って久々にお母さんの美味しいご飯食べなきゃだからね!」

だから奇妙なものを見る目はやめて。私が3歳児なのは事実なんだから。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -