今日私は、ナルト君が狸寝入りするのにじゃあそっちは任せようかとカカシ君達と一緒に依頼人の護衛をしている。
ガトーカンパニーで潜入調査した感じだと今日辺りに来るはずなんだよねぇ。

「サスケ君、睨むのやめてくれねぇだすかー?」
「煩ぇ。…です」

こういう可愛くない反応。逆に可愛いは可愛いんだけどねぇ。
少なくとも今のカカシ君よりは可愛い。それに、君を見てると無条件に思い出すから…君はそれを心から嫌がってしまうだろうけれど。

そんな感じに私がつらつらと思い出に浸っていたら、いつの間にか周りが戦闘モードになっていた。あら?

「ひ、緋兎さん何ぼーっとしてるんですか?!」
「えー、ごめんだすー」

依頼人を護っているサクラちゃんに、やる気なく、見るからに形だけの謝罪をした。今までの私のキャラを崩すようなそれに、サクラちゃんが戸惑いと共に失望したように私を見る。
それはこれ以上無い程の正解だった。けど、それを許す程私は優しくなかった。

「戦闘経験、それも命のやり取り。気を抜けば自分の命の灯火が消えそうになる…そういうの。忍の成長にかなり有効な手段だす。心配しなくても、ヤバそうだったら私がちょちょいのピョンと助けてあげるだす」

半分以上が嘘であり、単にここで私が手を出すのに私の損はあっても得が無いからなんだけど、年の功というかサクラちゃんは完全に簡単に言いくるめられてしまった。いや今の私3歳だけど人生経験的にね!
まだ子どもの彼女は勿論、納得はし切れていない。けど、忍として自分より優秀な人間に言われた言葉として、それっぽい事を言われてしまえばそう簡単に反論は出来ない。受け入れるしかない。忍とは縦社会。原則として上の命令に絶対服従。それはとても普通でつまらなかった。

私は普通に興味が無い。

「ッ緋兎さん…!!」

サスケ君が白君にぼろぼろに、けれど拷問としてはお遊びレベルに傷つけられているのを見ている時も私は変わりはしなかった。つまり、動く気配さえも見せなかった。サクラちゃんがどれだけ悲痛に叫ぼうとも。
傷だらけの人間というのは敵にしても味方にしても私には見慣れ過ぎたものであったし、本当に殺される瞬間には助けるし。

「うずまきナルト!ただいま見参!!オレが来たからにはもう大丈夫だってばよ!物語の主人公ってのは大体こーゆーパターンで出てきてあっちゅーまにィー敵をやっつけるのだァー!」

…またもつらつら最低な事を考えている間に派手なナルト君の登場。確かにナルト君は主人公っぽいなぁ。
そして派手な登場も束の間、ナルト君は表の演技をしながらもさすが今や暗部の総隊長様をやる器で、瞬時に辺りを見回し状況を把握し…故に一瞬だけ困惑した目で私を見た。

君は相変わらず、”陽さん”を神聖視し過ぎている。

サスケ君を助けに入った表モードのナルト君を横目に、やはり私は何もしない。
さっきの口から出任せフォローの意味が無くなっているぐらいサクラちゃんに睨まれるのは心苦しいけど、本当は全く心苦しくないから問題無いね!

よって私は無情にしばらく静観して、サスケ君がぼろぼろの一見死んでる仮死状態になって、ナルト君が九尾のチャクラを(意図的に)溢れ出させて、そうして私は初めて微動する。ただ、赤い兎を貼り付けただけですが。
隣の私のそんな奇怪な動きはさすがにサスケ君やナルト君を注視しているサクラちゃんとて無視出来なかったらしく、困惑の視線を向けられた。
しかし私の方は遠慮なく無視出来る。この面の意味はまだ知らなくていいよ。どうしてもってんならカカシ君が任務後にでも教えてくれるでしょ。人はそれを丸投げと言う。

ナルト君が九尾の気配を見せた瞬間、勝敗は確定した。揺るがない。
ならば此処からが私の出番で私の仕事だ。

ごめんねぇ、ナルト君。私は今も昔も善い人ではないんだよ。

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