暗部に再任してから、私のアカデミーの時間は睡眠時間になった。ああ快適。私前はアカデミーも行かず、暗部の最初の任務でいきなり総隊長就任だったしね。
そう考えれば、今回のただの暗部一班配属、私の力の抜き具合天才的だよね。でも一班って、総隊長だった前の時も私一班だったし、知り合いいっぱい居て気抜けないか。
あ、そういえば私狛君もといカカシ君にまだ記憶戻る前に一回会ったな。あれは何とも変な出会いだった。
よし寝よう。
「奈良、」
「…Aさんがチャクラを三割、またBさんがチャクラを二割出した時双殺されます。ただし場所が水場だった場合は条件が異なります」
私は言うだけ言って机に伏せた。入学してまだ10日ぐらいなのに、応用に応用を重ねた聞かれてもいないアカデミー卒業範囲の答えを勝手に計算した私は、今日も絶好調に嫌な生徒だった。
「あの、アキちゃん!」
聞き慣れない男の子の声に起こされ、私は目を緩く擦りながら身を起こす。えーっと…名前知らないや。
「何?」
「これ!誕生日おめでとう!」
「へ…あ、ありがとう」
きょとんとしながらも受け取った。そっか、今日3歳の誕生日。それで今日は朝からお父さんもお母さんもお兄ちゃんもそわそわ…いい家族だな。
それからその子を皮切りにわらわらとプレゼントを渡された。何でもいいから甘栗甘のみたらし団子だけくれればいいのに。
換金するのは流石に悪いよなー…と、甘栗甘に寄ってみたらし団子を頬張りながら帰路につく。もちもち。
後ろから誰かが追い掛けて来る。どうせまた明日にでも会うじゃない、いつもそう言うのに陽さんと少しでも一緒に居たいからって、君は眩しいぐらい純粋に笑うんだ。眩しいぐらいの、愛を伝えてくるんだ。
乱暴に肩を引かれ、振り返る。息切れしたその人に、私は笑った。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「っ――お前、歩きながら食ったら喉に串刺さるぞ馬鹿」
「えー、グロい!アキ忍の素質きらきらだから刺さんないもん!」
仲の良い兄妹。
大丈夫だよ、お兄ちゃん。まだたまに私のこと重ねて見たっていいんだよ。時間はまだまだあるから、ゆっくり忘れて。
「お兄ちゃん、なんか忘れてない?」
「家で言うからいいんだよ」
オブラートを挟んだような、曖昧で不確かなこの空間を、だけれど私は幸せと形容する。