新しく暗部の補充があると火影の爺さんに呼ばれ、俺は変化し狐の面をつけ夜を駆けた。
たまに、俺は自分が暗部総隊長と呼ばれている現状に吐き気を覚える。
「火影様、来ました、が…」
窓から部屋に入るなり暗部用の仕事口調で言い終わる前に、俺が窓を開け放った事により風で揺れるミルクティー色に目を奪われた。
何故かなんて知らねぇ。でも、その一瞬俺は確かにかつて無い程――いや、陽さんと共に居た時ぐらいに、無防備になった。
「この方が暗部の総隊長さんだすか?」
「っ!…ああ、総隊長の空だ」
「はじめますて!私この度暗部配属になりますた緋兎だす!よろしくお願ぇすます!」
…訛っているだけの普通の女だ。しいて気になるのは世の兎という兎に恨みでもあるのかってぐらい赤く潰された兎の面だが、暗部やってる奴にはそれこそ変わり者なんていくらでも居るしな…。
「暗部内の緋兎の配属は空に一任する」
「はい。…では火影様、今から簡単な任務に同行させても?」
「うむ。緋兎はよいか?」
「はいだす!」
俺の言う簡単な任務が新人にとっても簡単で無いと知っている火影の爺さんが苦笑し、何も知らねぇ新人が能天気に返事した。
いや、何も知らなかったのは俺の方で、それから一時間もしない内、俺は戦慄する事となる。
「わぁ、本当に簡単な任務だすねー」
これは何だ。
綺麗に、血の一滴も飛ばさず転がる数秒前まで人間だったモノ。
任務事態は確かに、俺にとってはだが簡単だった。けど、この俺がたまに姿を見失う。癖のある動きは、素直なそれより予測しづらい。こんなにも研ぎ澄まされたチャクラを、俺は知らねぇ。
それでも、隙のあるそれは俺よりは弱いはず。動きだってまだ未熟。ほら、今だって首を掻き斬れた。俺より、弱いはずなのに、
「終わりますた!」
「…帰るか」
「はいだす!」
…陽さんは、その圧倒的力で蹂躙するように人間を潰し、砕き、壊す。
陽さんの殺しの現場は、緋兎とは真逆と言っていいほど汚い。癖なんて無くて、ただ真っ直ぐに破壊する。ついでにチャクラの使い方もメチャクチャだ。
でも、
「緋兎、お前の配属は一班だ」
「はいだす、総隊長!」
俺や海、狛達が配属されている一班は、当然暗部最強の班。流石に最初から役職はつけねぇが…暗部の仕組みも知らねぇんだろう緋兎は、そこへ配属される意味も知らずに暢気に笑う。
…やっぱり、本質的に似ている気がした。俺はこの女にも、勝てる気がしねぇ。